「能登や やさしや」ワインまでも
-中前さんから届いた手紙-
私の中では、すっかり秋の風物詩となった群馬県旧粕川村(現・前橋市)の講演会は今年で34回目。11月16日の日曜日、いつものように主に先生方と、人の未来に関わることの素晴らしさを語り合ってきた。
そんな会を見越したかのように、この少し前、石川県穴水町の元小学校の校長先生、中前和人さんから手紙を添えて赤白の能登ワインが届いた。中前さんは3年前、私がこのコラムに小学校の恩師が94歳で亡くなられたと書いたとき「私にも忘れられない教え子がいます」と手紙をくださった。
中前さんが、かつて担任した小学6年生のクラスは前任者が心労で倒れるほど荒れていた。だけど、みんなで懸命に力を合わせて克服。なんとか卒業式を迎えた。
〈それから35年。私の退職時、この教え子が集まって私に「最後の授業」をさせてくれたのです。以来10年、同窓会が続いています〉
中前さんが贈ってくださったワインのラベルには「祝還暦 大徳小学校6年4組 担任 中前和人 奥能登の地から」の文字―。
〈15年前、私の最後の授業を企画してくれた教え子も卒業から50年近くたって還暦を迎え、私から記念のワインを贈ることにしたのです。この教え子たちは大徳小学校のある金沢市で、昨年は2回も同窓会を開いてくれました〉
その中前さんは「震度7の能登地震はすさまじいものでした。穴水町の自宅は一部損壊。1週間車中生活をし、2カ月、水のない暮らしを体験しました」という。
〈2回の同窓会は地震見舞いもかねてのことと思います。ただ私も後期高齢者。同窓会はもう終わりに、と言いますと、教え子は「能登まで迎えに行くから」。その言葉にしばらく続けようかと思っています〉
私もお相伴にあずかったワイン。ネットで見ると、穴水には茶畑のような美しい緑のブドウ園が広がっている。江戸時代から続く「能登や やさしや土までも」の言葉がまた胸に浮かんできた。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年12月1日(月)掲載/次回は12月16日(火)掲載です)
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