日刊スポーツ「フラッシュアップ」

2022年6月20日 (月)

しらけムードだけど…棄権している場合じゃない

-参院選の投票率が心配-

 国会は先週閉会。国政は7月10日投開票の参院選へと突き進む。そんなとき、ある週刊誌が先日、1人区で5人の女性候補が立った選挙区の応援で「顔で選んでくれたら1番」と演説した議員が、今度は別の選挙区の応援で党の関係者の出自や出身地域にふれた。「これは差別の拡散につながるのでは」とコメントを求めてきた。どの発言にもあきれるし、もううんざりだ。

 この週刊誌は前号で自民党の吉川赳議員(40)が18歳の女性に酒を飲ませてホテルに誘い、現金を渡したと報じている。売春防止法違反は明らかなのに、自民党は離党させただけ。国会は犯罪者に議員バッジをつけさせたまま閉じてしまった。

 今回の選挙でも女性議員の倍増が大きなテーマだが、こんな議員に辞職を迫ることもなく、セクハラ衆院議長の不信任案が否決されると中途半端に立ち上がって拍手していた女性議員は、一体何なんだ。

 そんなしらけムードのなか、早くもメディアでささやかれているのが前回48・8%と過去2番目の低さだった投票率がもっと下がるのでは、ということだ。

 だけど下火にはなったとはいえ、行政の無策で900万人が感染、3万人が命を落とした新型コロナ。平均賃金は30年間据え置きなのにハネ上がる物価。ロシアのウクライナ侵攻で倍増、世界3位となる国防予算。

 目の前にこれほど問題が山積しているのに、しらけていていいのだろうか。永田町では早ければ年内にも、という解散風が吹き始めているという。だが制度上、今回の選挙が終わると、国政への思いを1票に託せる機会は2025年参院選までない。ゆめ棄権している場合ではないのである。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年6月20日掲載)  

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2022年6月13日 (月)

緩和の前にマスクのひもと予防の心

-報じられないデルタクロン出現-

 「感染者数は○日連続、前週を下回りました」―。

 このところテレビでも新型コロナについて明るいニュースを届けることが多くなった。

 そんな時、いつも情報をくださる地元のS医師からメールが届いた。

 〈最近、中等症以上の患者さんはまず見かけません。ただひとつ心配なのは抗原検査キットが簡単に手に入るので陽性が出ても症状が軽いと市販の薬ですませている方が相当おられるのです。実際、きょう診察した7人の児童のうち4人はキットで陽性が出て心配になった方たちで、来院されなかったら日々の感染者にはカウントされないのです〉

 うーん、そんななか「もっとTokyo」「大阪いらっしゃい」のキャンペーンも始まりました。
 
 〈もちろんワクチンによる予防が効いていることは確かです。ただアメリカではオミクロン株がどんどん変異したBA・3や、デルタとオミクロン株が合体してオミクロンよりはるかに感染性の高いデルタクロンという新種が出現しているそうです。これらの新しい株がそのうち日本に入ってくることは間違いありません。それにはワクチンで対抗するしかありません。

 そうした中、マスクの着用や複数の人数による飲食、そして旅行に関する規制が緩和されつつあるのは結構なことだと思います。ただ、それには確かな感染者数の把握とマスクの着用、ワクチンの接種。それらをしっかりやった上での緩和が大事だと思うのです〉

 S先生、デルタクロンの出現、なぜか日本であまり報じられていませんね。いずれにしろ、私たちは緩和を前にマスクのひもも予防の心もしっかり締め直して…。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年6月13日掲載)

 

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2022年6月 6日 (月)

故原田さんしのぶ会でともった新たな灯

-警察史上最悪の金銭不祥事-

「お別れの会だったのに、終わってみると不思議なことが。みなさんの胸に新たな灯がともったのです」

 私はビデオメッセージでの参加だったが、5月末、札幌のホテルで昨年12月に83歳で亡くなられた原田宏二さんをしのぶ会が開かれ、会を終えて主宰者の市川守弘弁護士と奥様の利美さんからこんなメールが届いた。

 原田さんは元北海道警の最高幹部の1人。2004年、北海道新聞がスクープした道警裏金問題で顔出し、実名で「組織ぐるみでニセの領収書を作成していた」と告白。道警は現役とOBが数年がかりで9億円余りを返済するという警察史上最悪の金銭不祥事に発展した。

 原田さんとはその時以来のおつき合い。警察取材の長い私に折に触れて「組織への批判というのはね、少し距離を置いた所で広い範囲を眺める。そうでないとだれも納得しない。そう、岡目八目、その視線が大事なんだ」と言っておられたことが、いまも心に残っている。

 そんな思いで告白の数年後、原田さんが警察など司法の監視のため立ち上げた組織は市民フォーラムではなく、市民の目フォーラム。

 原田さんに心を寄せる40人に絞ったしのぶ会。コーヒーブレークを挟んだ後半は、その市民の目フォーラムの方々が次々にマイクを握ったという。利美さんのメールは「会は終わったけれど、それは決して終わりでなく、みんなにとって何か小さな始まりだった気がしてなりません」と結ばれていた。

 一徹そうなごま塩頭。いたずらっ子のような笑顔。花に縁取られた原田さんの遺影は「あとのことは、みんなの目にまかせるから」と語りかけておられたような気がしてならない。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年6月6日掲載)

 

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2022年5月30日 (月)

組織はだれひとり幸せにできなかった

-連合赤軍事件から50年-

 沖縄が本土復帰した1972年は札幌オリンピック、パンダの来日と明るいニュースがあった一方で、2月に連合赤軍によるあさま山荘事件が起きた。人質を取って立てこもった5人は銃を乱射。警官2人、民間人1人を射殺。10日後突入した機動隊に全員逮捕された。

 あれから50年、BSテレ東の番組で訪ねたあさま山荘は、鉄球が打ち破った壁は修復されていたが、ほぼ当時のまま。私は視聴率じつに89・7%、警察(サツ)まわりの取材の途中、刑事たちとテレビにくぎづけになった、あの日を思い出した。

 だが5人の逮捕後、さらに凄惨な事件が明るみに出る。連合赤軍を革命戦士のための組織と位置づけた彼らは、仲間の些細な言動にも自己批判を迫り、総括と称するリンチの末、殺害。後ろ手に縛ったままの遺体などを群馬の榛名山、妙義山などに14体、埋めていた。

 番組では、そのリンチ殺人に加担、服役した岩田平治さん(72)を取材させてもらった。世界同時革命を掲げた彼らは、より強固な組織へと学生中心の赤軍派と労働者主体の京浜安保共闘を合体させて連合赤軍を結成する。だが連合赤軍は、やがて組織を守るための組織と化して疑心暗鬼の末、仲間を葬り去ってしまった。

 「みんなを幸せにと作った組織が結果、だれひとり幸せにできなかった」。諏訪湖の近くで、いまは静かに暮らす岩田さんのしぼり出した声が心に残る。

 その「組織」を「国家」と置き換えたとき、21世紀の世界はまた同じことを繰り返しているのではないか。

 BSテレ東「NEWSアゲイン~あさま山荘事件から50年」は6月2日(木)午後6時54分から。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月30日掲載)

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2022年5月23日 (月)

人の心は壊されても器物以下なのか

-侮辱罪の厳罰化はこの程度でいいの-

 これが厳罰化なのか?

 ネット上の誹謗中傷対策として侮辱罪の刑罰を重くする改正法案が、いまの国会で成立する。それに先がけて、私は元高級官僚の高齢ドライバーの暴走事故で最愛の妻と3歳の娘を失った松永拓也さん(35)を取材させてもらった。

 事故後、悲しみの中で高齢ドライバー対策と交通事故撲滅を訴えてきた松永さんも中傷の被害者だった。ツイッターアカウントに「金や反響目当てで闘っているようにしか見えませんでしたね」「お荷モツの子どもも居なくなったから乗り換えも楽でしょうに」などのメッセージが届いて被害届を提出。22歳の男が侮辱罪で書類送検された。

 私がお会いした日、松永さんは、ネット上で「性格悪い」「生きている価値あるのか」などと中傷され、命を絶ったプロレスラーの木村花さんのお母さんと侮辱罪の問題で国会に足を運んでいた。花さんを中傷した男2人は現行の侮辱罪で書類送検されたが、22歳の女性を死に追い込んでおきながら、処分結果は9000円の科料。携帯電話で通話しながら運転した際の反則金の半分という額だ。

 こうした状況に花さんの母親たちが声を上げ、今国会でこれまでの侮辱罪の「30日未満の拘留または1万円の未満の科料」に、新たに「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を加えることになった。

 だけど悲しみの底にいる人たちをここまで傷つける誹謗中傷に、国会はこの程度の法改正でよしとしたのか。

 ちなみに現行刑法の器物損壊罪は3年以下の懲役・禁錮。国会議員のみなさん、人の心は、壊されても器物(モノ) 以下なのでしょうか。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月23日掲載)  
 

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2022年5月16日 (月)

本土こそ持ち続けたい「結どぅ宝」の思い

-沖縄復帰50年の日-

 きのう5月15日は沖縄の本土復帰から50年の日。それに先がけて4月28日、私は東海テレビの取材で沖縄県最北端、国頭村の辺戸岬にいた。70年前の1952年4月28日は沖縄にとって「屈辱の日」だった。

 この年発効したサンフランシスコ講和条約によって、北緯27度線を挟んで奄美群島は、いち早く本土復帰。取り残された沖縄は、それからなお20年間アメリカの統治下に置かれた。

 だけど条約は奄美群島最南端、鹿児島県与論島と沖縄最北端、国頭村の人々まで分断したわけではない。海上では漁船が手を振り合い、陸では折に触れてかがり火をたいて心を通わせあってきた。

 そんなつらい日々と復帰の喜びが、ないまぜになった4・28。私は、復帰の年に生まれて〝復帰っ子〟と呼ばれ、いま復帰前と復帰後の沖縄を考える「結(ゆい)515」の会の代表をしている比嘉盛也さん(当然、今年50歳)と一緒に記念式典を取材させてもらった。「50」と書かれたそろいのポロシャツ姿で与論と国頭の児童も参加した式では物々交換の時代を思い出して、この日、与論からヤギ2頭、国頭からはやんばるの森の薪が贈られたと知らされると会場に笑顔が広がった。

 あいさつに立った比嘉さんが会場に向かって「ウチナーンチュ(沖縄の人)は好きですか?」と問いかけると、与論の子どもも一緒になって割れんばかりの拍手。比嘉さんは「結515」の結は「結どぅ宝(つながりこそ宝)」の沖縄の思いを表したものだという。その気持ちはこの先、本土こそが持ち続けたい。2時間の式の間、2機のオスプレイが上空を飛んだ会場でそんな思いにかられるのだった。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月16日掲載)

 

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2022年5月 9日 (月)

メディアに関わる人すべてかみしめたい

-変貌した言論封殺の姿-

 5月3日、テレビ番組では改憲の動きにふれ、その数日前には朝日新聞阪神支局襲撃事件について新聞の取材を受けた。

 3日は小尻知博記者(当時29)が目出し帽の男に射殺され、朝日を「反日」とする犯行声明文が届いた事件から35年。私は取材に、この間、言論封殺の姿は大きく変貌したと指摘させてもらった。

 朝日が数々のスクープを放った安倍政権の森友・加計疑惑では、役人をどう喝。自殺者が出ても証拠の書類を改ざんさせて事実を隠蔽してしまった。後を継いだ菅政権は公安警察出身の官僚を使って6人の学者を学術会議から追い出し、意に沿わぬ学者から学究の場まで奪い取ってしまった。

 権力は一滴の血を流すこともなく、表現・言論の自由を封殺してしまったのだ。

 だが実態は悪寒が走るところまで突き進んでいる。朝日新聞は先日、すでに退社を申し出ていた中堅記者に、あえて停職1カ月の処分を下した。記者は「週刊ダイヤモンド」が安倍元首相に核保有などについてインタビューした件で「安倍氏が内容を心配している。私が安倍氏の全ての顧問を引き受けている」などと言って強硬に記事のゲラ刷りを見せるよう迫ったという。

 もちろん、ハネ上がった一記者のとっぴな所業ではあるだろうが、かつて言論封殺の危機にさらされた朝日に所属する記者が、瞬時であろうと圧力をかける側に立ってしまったことが残念でならない。

 事件から35年の日を前に、朝日は社説で〈日本を言論の暗黒時代に戻すわけにはいかない〉と書いた。5月3日は朝日の記者のみならず、メディアに関わるすべての人が改めてこの言をかみしめる日でありたいと願っている。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月9日掲載)   

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2022年5月 2日 (月)

国が被害者救済に乗り出すべき

-「あすの会」再結成-

 ジャーナリストとして、さまざまな会の設立や目的を達成しての解散は数多く取材してきたが、解散からわずか4年で会が再結成されるケースは初めてだ。
 
 「全国犯罪被害者の会」、通称「あすの会」がこの春、「新あすの会」として再結成された。2018年6月に開かれた解散総会を取材したが、発足から18年たって犯罪被害者基本法の成立や裁判での被害者参加の実現など一定の成果をあげたこと。何より会長の岡村勲弁護士はじめ会員の高齢化が解散の大きな理由だった。

 だがそれから4年。「今日は苦しいが、あすは必ず良くしてみせる」というあすの会の趣旨どころではない状況が出てきた。日本には「犯罪被害者等給付金」があるが、欧米に比べて極端に少なく、最高でも2900万円、平均630万円。働き手を失った家族は、とても生活できない。

 そこにもっと悪い状況が追い打ちをかけてきた。2019年には36人が死亡した京都アニメーション放火殺人。昨年は小田急線、京王線で「死刑になりたい」「誰でもよかった」という無差別殺人未遂放火事件が発生。さらに大阪のクリニック放火殺人では26人が死亡。いずれも被告の責任能力を問う鑑定が必要だったり、大阪の事件のように被疑者も死亡してしまって、賠償どころではないケースもある。

 ここは海外の一部の国と同様、国がいったん被害者救済に乗り出すしかないのではないか。それにしても、新あすの会でも会長となる岡村さんは93歳。心が痛む。その岡村さんを幹事として支える土師守さんの次男、淳君が殺害された神戸児童連続殺傷事件は、この5月24日で発生25年となる。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月2日掲載)

 

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2022年4月25日 (月)

学校が子どもの命の最後の場所になってはならない

-東日本大震災 大川小津波裁判-

 私自身、真相の何十分の1も知らなかったと思い知らされた。映画「『生きる』大川小学校 津波裁判を闘った人たち」を見た。

 児童74人、教職員10人が犠牲になった東日本大震災大川小津波被害。石巻市や宮城県、国(文科省)が出した報告書や検証結果。

 破棄された児童からの聞き取りメモ、ねじ曲げられた子どもの証言。実は1度も実施されなかった避難訓練。裏切られるどころか、傷つけられ続けた親たちが最後に選択したのは、長く厳しい裁判での闘いだった。

 吹きさらしの校庭。親たちと、たった2人の弁護団はストップウオッチ片手に北上川方向ではなく、裏山に逃げる時間は十分にあったことを証明していく。

 そんな親たちの耳にいつもこだましていたのは、子どもたちの悔しさがこもった思い「先生の言うことを聞いていたのに!!」だった。

 その思いに2審仙台高裁が応え、最高裁が支持、確定させた判決は「子どもたちの命を奪ったのは教育現場ではなく、国、宮城県、石巻市の組織的過失」とするものだった。

 親の耳にこだましていた子どもたちの思いに、高裁判決は「学校が子どもの命の最後の場所になってはならない」という言葉で応えてくれた。

 私はこのコラムでも民意に沿わない裁判所をたびたび批判してきたが、いまあらためてここに一筋の光を見た思いがする。

 「生きる―」の映画はクラウドファンディングで製作費の一部をまかない、いま各地で試写会を開く一方、劇場公開に向けて努力中という。1つでも多くの映画館が劇場公開に手を挙げてくれることを願っている。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年4月25日掲載

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2022年4月18日 (月)

メディアは検証すべき特定少年の実名報道

-19歳男 甲府市夫婦殺人放火事件-

 少し前のことになるが、事件報道にかかわって50年余り、ある種の感慨をもって東海テレビ(名古屋)でニュースを伝えた。

 昨年10月、甲府市で夫婦が殺害され、住宅が全焼した事件で、この家の長女と同級生だった19歳の男を甲府地検が殺人、放火などの罪で起訴。地検は少年法改正で18、19歳が特定少年とされたことから、実名を公表した。番組も少年を実名で顔写真をつけて報じた。

 私はスタジオで、こうした判断はあくまで報道機関に委ねられていると説明。併せてこれまで被害者ばかりが報道されることへの批判が強かったことにもふれた。

 さっそく先週、朝日、毎日、読売などが各報道機関の対応を報じた。それによると、これまで通り実名も顔写真もなしとしたのは東京新聞1紙だけ。対して実名、顔写真で報じたのは、日刊スポーツにも配信している共同通信や産経新聞。それに東海テレビも系列のフジ。TBS、テレビ朝日、日本テレビのキー局。最も多かったのが実名のみ顔写真なしで、朝日、毎日、読売、それに地元の山梨日日新聞、NHKなどだった。

 だが、私はメディアが力を入れるべきは、これからではないかと思う。実名報道で少年の家族が困惑していないか。被害者や地域社会は平静か。何より今後の裁判員裁判に影響は出るのか。メディアが検証すべきは、それではないのか。

 あまり報じられていないが、その裁判員にも4月から18、19歳が加わることになった。今回の事件の19歳の被告を19歳の裁判員が裁くことだってあり得るのだ。

 さまざま、取り巻く環境が目まぐるしく変わっていく、「十九の春」である。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年4月18日掲載)

 

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