故原田さんしのぶ会でともった新たな灯
-警察史上最悪の金銭不祥事-
「お別れの会だったのに、終わってみると不思議なことが。みなさんの胸に新たな灯がともったのです」
私はビデオメッセージでの参加だったが、5月末、札幌のホテルで昨年12月に83歳で亡くなられた原田宏二さんをしのぶ会が開かれ、会を終えて主宰者の市川守弘弁護士と奥様の利美さんからこんなメールが届いた。
原田さんは元北海道警の最高幹部の1人。2004年、北海道新聞がスクープした道警裏金問題で顔出し、実名で「組織ぐるみでニセの領収書を作成していた」と告白。道警は現役とOBが数年がかりで9億円余りを返済するという警察史上最悪の金銭不祥事に発展した。
原田さんとはその時以来のおつき合い。警察取材の長い私に折に触れて「組織への批判というのはね、少し距離を置いた所で広い範囲を眺める。そうでないとだれも納得しない。そう、岡目八目、その視線が大事なんだ」と言っておられたことが、いまも心に残っている。
そんな思いで告白の数年後、原田さんが警察など司法の監視のため立ち上げた組織は市民フォーラムではなく、市民の目フォーラム。
原田さんに心を寄せる40人に絞ったしのぶ会。コーヒーブレークを挟んだ後半は、その市民の目フォーラムの方々が次々にマイクを握ったという。利美さんのメールは「会は終わったけれど、それは決して終わりでなく、みんなにとって何か小さな始まりだった気がしてなりません」と結ばれていた。
一徹そうなごま塩頭。いたずらっ子のような笑顔。花に縁取られた原田さんの遺影は「あとのことは、みんなの目にまかせるから」と語りかけておられたような気がしてならない。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年6月6日掲載)
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