がんばれ、ぶら下がり取材の若手記者たちよ
-キレ気味の菅首相-
首相と記者の間に、いい意味で緊張感が生まれているのではないか。いつも司会進行を務めていた7万円接待の山田真貴子内閣広報官が官邸での記者会見を欠席、その後辞任。小野日子氏が後任となるまで菅首相は立って記者の質問を受けるぶら下がり取材に応じた。
これがなかなかの圧巻。特に、あわてて始めた最初のぶら下がりでは「この形式は山田氏隠しでは」と問われて語気を強めて「関係ない」と答えたものの、目は違うことを言っていた。その後も普段あまり質問の機会がない若手記者が見事なパス回し。進行役までさせられた首相は「先ほどから同じ質問ばかり」とキレ気味に取材を打ち切った。
久々に小気味がいいなと思っていたら、なんとテレビで政治部出身のOBが「総理を怒らせる質問をしてどうするんだ!」。これには本当に倒れそうになりました。何十年も相手が喜ぶことだけ質問してきた記者かいることが恥ずかしい。
かと思うと、あるフリー記者は「山田元広報官は会見で質問を打ち切るかわりに、あとでメールで質問を受けつける画期的な形にした」。
この人も恥ずかしい。記者会見というのは、質問と答えがその場はもちろん、読者視聴者にもオープンに伝わるもの。1対1のやりとりの、どこが画期的なんだ。
がんばれ、ぶら下がり取材の若手記者。私が記者になりたてのころ先輩が教えてくれた、アメリカ合衆国独立の時代に人々がよく口にしていたという言葉を思い出す。「新聞のない民主国家と新聞のある独裁国家だったら、私たちは断固、後者を選ぶ」。
さて菅首相はどちらだ。「新聞のない独裁国家」だったりして。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年3月8日掲載)
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