« 日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏 | トップページ | 日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏 »

2018年8月16日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

それでも彼はやっている?
‐今市女児殺害 2審は印象有罪誘導‐

  判決を聞いて、痴漢冤罪事件をテーマにした周防正行監督の映画、「それでもボクはやってない」を思い起こした。少し前のことになるが、東京高裁の藤井敏明裁判長は、2005年12月1日、栃木県今市市(現・日光市)で小学1年生の女児が殺害され、翌2日茨城県常陸大宮市の山中で遺体が見つかった事件で一審、東京地裁の無期懲役の判決を破棄、改めて無期懲役を言い渡すという、くるんと回って元に着地したような判断を示した。

  この判決についてメディアはこぞって、1審裁判員裁判で有罪の決め手ともなった取り調べの録画映像について高裁が「主観に左右される可能性が否定できない」と厳しい判断を示したことを取り上げ、新聞の社説も「取り調べ映像 『印象有罪』の制御が必要」(毎日)など、冤罪防止のために導入された録音、録画がじつはもろ刃の剣であると警鐘を鳴らしている。

  だが私は、この判決とメディアの論調がじつは重大な事実から目をそらさせ、「印象有罪」に誘導しているように思えてならない。

  たとえば犯罪事実で「いつ」「どこで」は絶対に欠かせない要件だが、1審では「12月2日午前4時ごろ」「常陸大宮市の林道で殺害」となっていたものの、それではあらゆるところでつじつまが合わなくなってしまうとみた検察・警察は、なんと「「女児の行方不明から遺体発見までの間」「栃木、茨城県内か、その周辺」と、何から何までグーンと広げたむちゃくちゃな訴因変更。

  さすがにこんなものは認められないと思っていたら、高裁はなんと「然るべし」。これで勝又被告はアリバイ主張の手足を完全にもがれてしまったのだ。

  重大なことはまだある。物証がゼロのなか、女児の遺体から第三者のDNA型が検出されてしまった。すると高裁は、法廷で茨城県警の鑑識課員が「キットを水洗いして再利用するなど、問題があった」と証言したことなどを根拠に「捜査過程で他者のDNA型が混入する可能性はあった」。

  取り調べ映像の是非はともかくとして、犯行の「いつ」「どこで」は雲をつかむような話。加えて女児の遺体からは、勝又被告とはまったく別人のDNA型。

  あらためて藤井裁判長に問いたい。「それでも彼はやっている」のですか。

(2018年8月14日掲載)

|

« 日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏 | トップページ | 日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏 »