初春 小さな美しい日本を思う
-京都・観音寺を訪れる-
年始の混雑を避けて、この冬は暮れに京都を訪ねた。あらかじめ決めていた行き先は天平、奈良時代の古寺が点在する南山城の観音寺(大御堂)だけ。6、7年前の正月、小雪が舞うなか、ご住職に本堂のガラス戸を開けてもらって拝観した、たおやかなたたずまいの国宝、十一面観音菩薩立像にもう一度会いたかった。
その節は檀家から届いた新年のお供えのお餅や柿を私たち夫婦がどっさりいただいて、友人に「寺から供物をもらったのか」と、あきれられた話をご住職としながら本堂に。前回と打って変わって、やわらかな冬の光を浴びた観音菩薩は、ふるえるほど美しかった。
「今度はお堂の前に菜の花畑が広がるころに」と言いながらご住職は、この秋はNHK BSの新年からのドラマの撮影で「小さな寺では大変な出来事でした。ぜひご覧になって」という。
ドラマは1月4日夜の放送。これまでの1、2に続く第3シリーズの「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」全9話。その第1回のイントロが観音寺の十一面観音菩薩だった。
京都で240年続く和菓子の老舗の跡取り娘、三八子(みやこ)がパリで一緒に暮らす夫の先妻の娘で大学生の洛(みやこ)。彼女が一時帰国して観音寺を訪ねるところから始まる。
住職役の笹野高史さんが十一ものお顔のそれぞれの意味を説明する。それはさまざまな掟や、しきたりの中で、なおプライド高く、いくつもの顔で生き抜く古都の人々にどこか通じる。それとともに、ドラマは季節で移ろう京の景色、衣食住、パリで作る老舗の和菓子の味。古都の人々が継承する奥深い美しさも伝える。
すてきなドラマと思いつつ、どこか私の「密かな愉しみ」に藪から棒に光を当てられたようなとまどいを感じながら、いやいやそんな小さなことを言ってはいけない。声高に叫ばなくとも、山城の小さな古寺のまわりに,、小さな美しい日本がある。そんな思いの初春だった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2026年1月12日掲載/次回は1月26日掲載です)
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