支払えるとは思えない どうすれば…
-99年名古屋主婦殺害 夫が損害賠償訴え-
一報を聞いて応援したいと思う半面、虚しさもわいてきた。1999年、名古屋市西区で妻が殺害された事件で、夫の高羽悟さんが昨年10月、26年ぶりに逮捕された元同級生の女を相手取って損害賠償の訴えを起こした。
慰謝料や現場保存のため高羽さんが事件後、借り続けたアパートの家賃など、数千万円に上るとみられる。
ただ、高羽さんの前には不法行為から20年で損害賠償請求権がなくなる民法の「除斥規定」が大きく立ちはだかるが、高羽さんはDNA型鑑定などで長期捜査が可能になったいま、この壁をなんとか突き破りたいとしている。
だが高羽さんには、もうひとつ大きな壁がある。
裁判で勝訴したとして今後、無期か長期の懲役刑が予想される女が多額の賠償金を支払えるとは到底思えない。
そうしたなか先日、福岡高裁は2020年、21歳の女性が見ず知らずの15歳の少年に刺し殺された事件で、女性の遺族が少年と母親に賠償を求めた控訴審判決で、少年にだけ賠償を命じた1審判決を変更、母親にも連帯して5400万円を支払うよう命じた。
母親は幼少期から少年に性虐待を繰り返し、事件の直前に少年院を出た少年の引き取りを拒否したことも高裁は責任重大とした。ただ、ここにも大きな壁がある。いま服役中の少年と、この母親が多額の賠償金を払えるとは思えない。
高羽さんたち殺人事件被害者の遺族でつくる「宙の会」は、国が賠償金を立て替え、その後、加害者から取り立てる代執行制を提唱しているが、一時的とはいえ、国税で加害者の肩代わりをすることへの抵抗も強い。だとしたら、希望する国民が納税と一緒に保険金を掛けておく公的な「犯罪被害補償機構」といった組織はできないものか。
保険で賠償金を支払い、加害者に対しては生涯、ほそぼそとでも取り立てを続ける。
自分は加害者にはならないと誓うことができても、被害者にならないと言い切れる人はいないのだから。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2026年4月6日(月)掲載/次回は4月20日(月)掲載です)
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