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2026年3月

2026年3月23日 (月)

「事件」を調査や対策ですますな

-性的強制や暴力、暴言は犯罪だ-

 通信社からコメントを求められて事案の内容を聞きながら、いら立ちを通り越して怒りがわいてきた。

 埼玉県立小児医療センターで抗がん剤を注入された10代の男性患者が死亡。2人が意識不明になっていると、病院長らが記者会見を開いて明らかにした。

 3人は昨年初めと10月に、背骨周辺から抗がん剤を注入する髄腔内注射のあと神経症状を発症。10月に注射された男性が死亡。2人は意識が戻らない状態という。

 センターが昨年11月、患者の髄液を分析したところ、ごく少量でも神経症状を起こすため髄腔内注射では絶対に使わない「ビンクリスチン」が検出された。この薬は劇薬のため薬剤部の一室で厳重に保管され、薬剤師が医師の指示書に基づいて調剤するが、3人の投与日にこの薬が使用された形跡はなかったという。

 通信社の記者からそこまで聞いて、私は思わず「これは事件だろ」と話を遮ってしまった。ミスだとするには同じミスを3度も犯すとは考えにくい。薬剤が減っていないということは、あとで補完したか、薬品をほかで調達した故意の犯罪。殺人罪か傷害致死傷罪になる。だけど記者の説明の続きを聞いて私は心底驚いた。

 センターが事案を県警に届け出たのは、この日になってから。それまでは昨年11月に立ち上げた「調査対策委員会」で関係者の聞き取りなどをしてきたという。

 だけど、重大な過失どころか殺人にもなりかねない事件を「調査」したり「対策」を立てて何になるんだ。

 昨今、セクハラ、バワハラに暴力、暴言。役所や企業、テレビ局が次々に立ち上げる第三者委員会や調査委員会。だけど性的強制は不同意性交や強制わいせつ罪だし、首長や上司の暴力、暴言は暴行、脅迫の犯罪だ。それを調査や対策ですまされたのでは被害者はたまったものではない。小ざかしく逃げるんじゃない。司法に任すべきだ。あらためて言うまでもない。私たちは法治国家の国民なのだ。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2026年3月23日(月)掲載/次回は4月6日(月)掲載です)

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2026年3月 9日 (月)

原発に頼っていた地域ほど復興は遅い

-11日は東日本大震災から15年-

 あさって11日は東日本大震災から15年。それに先がけて町の山間部、山木屋地区が原発被害で避難指示となった福島県川俣町を東海テレビの取材で訪ねてきた。

 宮地勝志さん(66)は愛知県日進市から、震災翌年、川俣町役場に応援職員として派遣され、原子力災害対策課長として原発被災者と向き合う日々。定年後、そのまま川俣町民となった。

 いまでは夫婦それぞれの親も呼んで、宮地さんは山木屋の農地で野菜作りをする一方、町の地域おこし協力隊の応援団。ご一緒した町の居酒屋で口を突いて出るのは「わが人生に悔いはなし」。

 ただ、力をいれた山木屋の復興は避難解除になって9年、住民票のある580人のうち戻ったのは310人。それでも被災自治体の中ではいい方だという。原発にほど近い市町村では帰還者はおおむね2、3割だ。

 宮地さんは当たり前の話だけど、と前置きして「原発に賛成反対を抜きにして、経済も雇用もそこに頼っていた地域ほど復興は遅い。忘れがちだが、まずそれを胸に刻んでほしい」という。

 広野太さん(80)は、その山木屋地区で36世帯の区長をしていたが、いまは半分以下の13世帯。広野さん自身も仮設住宅の自治会長から、いまは夫婦で福島市に住む。会社勤めの息子さん一家は二本松市に。

 地区の子供歌舞伎の舞台にもなる大広間があった母屋は、取り壊されて跡形もない。離れの家と農機具の倉庫が残るだけ。3カ所にもなった生活の拠点。だけど広野さんは「この選択は正しかった」と言い切る。

 避難指示が出た当時は、息子さん夫婦に女の子、広野さんにとっての孫娘が生まれたばかり。「何があろうと、この子を原発の被災者にしてはなんない。たんだそれだけだったぁ」。

 その女の子は15歳のこの春、高校1年生だ。

 ♪ 誰かの笑顔が見える 悲しみの向こう側に 花は花は花は咲く…

 何度も口ずさんだフレーズが、また浮かんできた。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2026年3月9日(月)掲載/次回は3月23日(月)掲載です)

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