無実の命 奪おうとした検察への怒り どこに置いてきたのか
-無罪確定の袴田事件-
静岡朝日テレビのニュース番組「とびっきり!しずおか」に出演しているご縁もあって、地元の静岡新聞や静岡朝日テレビの記者からお誘いを受けて楽しい一夜をすごした。最近の事件や県政。それに全国ニュースにもなった伊東市長選…。裏話や失敗談に、うなずきあったり、笑い転げたり。
だけど昨年、事件から58年、やっと死刑から無罪が確定した袴田事件の袴田巌さん(89)と姉のひで子さん(92の)話になると、座の空気は一変して重くなった。
検察がでっち上げた証拠で袴田さんが死刑囚とされた事件に、いち早く国会議員が議員連盟を結成。新たな再審法を議員立法で国会に提出する流れとなった。だけど静岡新聞で20年、この事件を追い続けている記者によると、いまは真逆の方向に向かっているという。
この事態に法務省(検察)は5月急遽、法制審議会に再審法部会を設置したが、これは明らかに「議員立法潰し」。部会の20人の委員には再審法制定を求める弁護士を2人入れたが、冤罪被害者はゼロ。あとは法務省寄りの人物で固めた。
この結果、議員立法が厳しく禁じた検察の証拠隠しも、裁判所の決定に対して際限なく繰り返す不服申し立ても、すべて認める方向。こうした流れに危機感を抱いた袴田弁護団は、まさにこの日、議員立法の速やかな成立を求めて要請書を議連に提出。テレビの女性記者は、その弁護団に同行してきたところだった。
これに先立ち、元裁判官63人と刑法研究者135人が相次いで「事態は危機的」とする声明を出した。
それにしても、袴田さんが死刑台から生還したときの袴田さんと姉のひで子さんに対する申し訳の立たない思い。そして無実の命を奪おうとした検察への怒り。あのときのマグマが渦巻くような熱気を社会は、とりわけ私たちメディアは、どこに置いてきたのか。
この日、史上最速の初雪を観測した静岡の夜が一層、寒く感じられるのだった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年12月16日(火)掲載/次回は2026年1月12日(月)掲載です。どうぞよいお年をお迎えください)
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