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2025年11月

2025年11月17日 (月)

犯人追い込んだ4者のスクラム

-名古屋主婦殺害 夫 宙の会 警察 報道-

 あれから半月たつのに、私の胸はまだ高鳴っている。東海テレビでニュースの生放送中に飛び込んできた、1999年、名古屋市西区で高羽奈美子さん(当時32)が殺害された事件の犯人、安福久美子容疑者(69)逮捕の一報。奈美子さんの夫、悟さん(69)には事件発生から26年間、借り続けている現場のアパートの一室で何度も取材させてもらった。 

 それにしても、私がこうして関わった事件の解決がニュースの生放送中に…。半世紀以上事件取材をしてきて、もちろん初めてのことだ。 私は今回、4者がガッチリ組んだスクラムが間違いなく犯人を追い込んだと見ている。もちろん、まん中にいるのは被疑者の血痕が今も生々しい部屋を借り続け、街頭で声をからして協力を呼びかけた高羽さんだ。

 そしてその高羽さんとしっかり腕を組んできたのが主に未解決殺人事件の被害者でつくる「宙の会」だ。この会の強い働きかけもあって2010年、殺人事件の時効は廃止された。それがなければ、今回の安福容疑者は逃げおおせていた。

 ちなみに宙の会の土田猛特別参与は、この12月30日、発生から25年になる世田谷一家殺害事件の捜査を続ける警視庁成城署の元署長だ。

 そんな被害者たちの声に応えてみせたのは、もちろん警察だ。未解決事件では、年月がたつと情報提供を呼びかける待ちの姿勢になりがちだが、愛知県警の特命班は何年かかろうと捜査線上に浮かんだ人物を1人ずつつぶしていくと言明。結果、この捜査が容疑者を出頭させるまでに追い込んだ。

 そして、そのスクラムの一端を担ったのが、口幅ったいようだがメディアではないか。高羽さんの思いに応えて、新聞、テレビは毎年、持ち回りのように事件を報道。安福容疑者が「新聞も見られなかった」と言うほど追い詰めた。

 どうだろう、この4者がもう1度スクラムを組んで、事件の検証・記録集を出せないものか。日本の犯罪捜査史上、めったに得られない大事な資料になるはずだ。


( 日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年11月17日(月)掲載/次回は12月1日(月)掲載です)

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2025年11月 3日 (月)

おもろいことをアホになってやってみる学風

-ノーベル賞に京大出身2氏-

 今年のノーベル生理学・医学賞は大阪大特任教授の坂口志文さん。化学賞は京都大特別教授の北川進さんが受賞。来月10日、スウェーデン・ストックホルムの授賞式に臨まれる。 
 
 2人とも京大卒。それについて毎日新聞の「なるほドリ」の欄が〈ノーベル賞受賞者 東大抜き京大最多の10人 「自由の学風」モットー〉と書いていた。それによるとこれまでの受賞者30人のうち京大は10人。東大9人。化学賞など自然科学では京大10人、東大6人と京大が圧倒している。

 記事を見て20年以上前、数学者で独特の弁舌、森毅京大教授とラジオ番組の審査でご一緒したとき、「ノーベル賞は、なぜ東大より京大が多いのか」が話題になったことを思い出した。

 森先生は即座に「京大の方がアホが多いからや」。先生によると東大、京大にくるお利口な学生は早々に教授が教えることなど習得してしまう。さて、そのあとどうするか。自分なりにその先を勉強するか。それとも何かおもろいことをアホになってやってみるか。京大はそのアホの数が東大よりはるかに多いという。

 ノーベル賞級の研究には、そうした飛び抜けた発想が必要だと言う。そういえば制御性T細胞で受賞した坂口さんも「なんでだれもしない研究を」と不思議がられていたという。

 さて、あのとき、そんな京大生気質を語りながらも森先生は「そやけど近ごろは本物のアホがふえてしもて」と顔を曇らせたのだった。

 締め切り厳守と言っておいたのにゼミ論文を遅れて持ってきた学生を叱りつけながら「もし帰り道に落ちとったら、預かったボクが落としたと思って拾うやろな」。

 卒業がかかっていた学生は満面笑顔で研究室を飛び出して行ったのだが、ものの5分もしないうちに息せき切って戻ってきた。「先生、どこに落としておいたら拾ってくれますか!」。

 あれから約四半世紀。いま京大生は? 泉下の森先生に代わって坂口さん、北川さんに、ぜひ聞いてみたい。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年11月3日(月)掲載/次回は11月17日(月)掲載です)

 

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