ボヤでごまかそうとしたところ…大火事に
-佐賀県警DNA鑑定不正問題-
いま日本の警察は、大川原化工機でっち上げ事件のように、やってはならないことをやる。一方で川崎ストーカー殺人のように、やるべきことはやらない。そこにもう1つ加わった。するべきことを、放り出す―。
佐賀県警科学捜査研究所の40代職員が、7年間にわたってDNA鑑定を実施していないのにしたことにしたり、鑑定日時を書き換えていたことが発覚した。その数、じつに132件。だが県警は、この男を逮捕もせずに懲戒免職にした。
DNAといえば、かつて足利事件の菅家利和さんが、DNAの再鑑定で無罪が確定したように刑事事件では最強の証拠。私もこの件で共同通信や西日本新聞から見解を求められて「DNAの不正鑑定とは前代未聞で驚きだが、県警内部という身内で、厳正な検証はしょせん、無理。早急に第三者委員会を立ち上げるべき」とした。
佐賀県議会も同様に福田英之県警本部長を呼んで第三者委員会の設置を迫ったが、毎日新聞によると福田本部長は「県公安委員会も必要ないと言っている」と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返したという。
だけど本部長が錦の御旗に掲げる県公安委は、3人の委員のうち1人が弁護士。ほかの2人は委員長の女性が元高校校長。もう1人はタクシー会社の役員。失礼ながら、このお二方がDNA鑑定に高い知識をお持ちだとは到底、思えない。
佐賀県警のこの対応に、さすがに警察庁も怒りをあらわにし、最も厳しい処置とされる特別監察の実施を決めた。ボヤでごまかそうとしたところが、大火事になってしまった。
佐賀県警は2021年に起きた太宰府殺人事件で、被害女性の身に危険が迫っていると11回も訴えて来た親族を、29歳の警官がそのたびに追い返し、結果、最悪の事態を招いてしまった。
佐賀県警の、いや日本警察のこの実態に、まことに凡庸な感想だけど…こんなDNAだけは、しっかり受け継がれているんだなぁ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年10月6日(月)掲載/次回は10月21日(火)掲載です)
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