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2025年10月

2025年10月21日 (火)

背番号7、その後ろ姿が残してくれたもの

-巨人長野選手の引退-

 巨人にとって今季最終戦となったクライマックスシリーズ、DeNAとの第2戦。延長11回、4時間31分の試合はもう1つ、心にしみるものを残してくれた。 

 チャンスのたびにベンチの最前列で声を張り上げ、戻ってくる投手のお尻をポンとたたく長野久義選手40歳が、テレビに大写しになっていた。

  その姿に、試合終了を待って長野選手夫人で旧知のテレビ朝日アナウンサー、下平さやかさんにメールを入れさてもらった。 

 〈背番号7。その後ろ姿に、あらためてさまざまなことを誓った若い選手も多かったことと思います…〉

 翌日、下平さんからかかってきた電話は「きょうは直接、本人が話したいと言っていますので」。その電話の向こうで長野選手は「まだ球団や監督、親しい人にしか言っていませんが、引退を決意しました」。

 突然のことに「いや、まだまだ」と言う私に「それも考えましたが、もう悔いはないので」。結局、私は「今後も野球界のために」と言うのが精いっぱいだった。

 大学、社会人、2回のドラフト会議で他球団からの指名を丁重に断ったうえで果たした巨人入り。新人王や首位打者、ゴールデングラブ賞に輝きながら、2019年に人的補償で広島へ。若い選手に「野球以外のことなら、なんでも相談してください」と笑わせて、巨人に戻るまでの4年間、しっかりチームに溶け込んだ。

 長野選手はアオダモの木のバットを愛用。1試合で3本折ったという逸話を持ちながら、成木まで60年かかるアオダモの育成に協力。私が東京6大学野球なども植林に取り組んでいるとテレビで話すと、下平さんを通じてお礼の言葉が届いた。

 日刊スポーツの為田聡史記者が〈長野選手は失投、甘い球という言葉を嫌った。「相手投手に失礼だと思う」が、その理由だった〉と書けば、読売新聞(大阪版)の見出しは〈強さと優しさ 背中で見せ〉だった。

 ―野球は、いろんなことを学ばせてくれる。



(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年10月21日(火)掲載/次回は11月3日(月)掲載です)

 

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2025年10月 6日 (月)

ボヤでごまかそうとしたところ…大火事に

-佐賀県警DNA鑑定不正問題-

 いま日本の警察は、大川原化工機でっち上げ事件のように、やってはならないことをやる。一方で川崎ストーカー殺人のように、やるべきことはやらない。そこにもう1つ加わった。するべきことを、放り出す―。

 佐賀県警科学捜査研究所の40代職員が、7年間にわたってDNA鑑定を実施していないのにしたことにしたり、鑑定日時を書き換えていたことが発覚した。その数、じつに132件。だが県警は、この男を逮捕もせずに懲戒免職にした。

 DNAといえば、かつて足利事件の菅家利和さんが、DNAの再鑑定で無罪が確定したように刑事事件では最強の証拠。私もこの件で共同通信や西日本新聞から見解を求められて「DNAの不正鑑定とは前代未聞で驚きだが、県警内部という身内で、厳正な検証はしょせん、無理。早急に第三者委員会を立ち上げるべき」とした。

 佐賀県議会も同様に福田英之県警本部長を呼んで第三者委員会の設置を迫ったが、毎日新聞によると福田本部長は「県公安委員会も必要ないと言っている」と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返したという。

 だけど本部長が錦の御旗に掲げる県公安委は、3人の委員のうち1人が弁護士。ほかの2人は委員長の女性が元高校校長。もう1人はタクシー会社の役員。失礼ながら、このお二方がDNA鑑定に高い知識をお持ちだとは到底、思えない。

 佐賀県警のこの対応に、さすがに警察庁も怒りをあらわにし、最も厳しい処置とされる特別監察の実施を決めた。ボヤでごまかそうとしたところが、大火事になってしまった。

 佐賀県警は2021年に起きた太宰府殺人事件で、被害女性の身に危険が迫っていると11回も訴えて来た親族を、29歳の警官がそのたびに追い返し、結果、最悪の事態を招いてしまった。

 佐賀県警の、いや日本警察のこの実態に、まことに凡庸な感想だけど…こんなDNAだけは、しっかり受け継がれているんだなぁ。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年10月6日(月)掲載/次回は10月21日(火)掲載です)

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