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2025年8月

2025年8月25日 (月)

浪速の空に「六甲おろし」かたや空しい「石破おろし」

-戦後80年の夏に思う-

 早くも浪速の空に響く「六甲おろし」。不肖巨人ファンとしても阪神にマジックがついて、ここは潔く、というところだが、なんとも不可解なのが自民党内の「石破おろし」だ。

 昨年の総選挙、都議選、そして今回の参院選でスリーアウト。選挙の結果が全てとチェンジを叫ぶ一部自民党議員を尻目に、朝日新聞の直近の世論調査では、石破首相は「辞めなくていい」が前回、7月の47%を大きく上回り、54%となった。なぜ「辞めなくていい」がこれほど急伸したのか。私は朝日の調査が8月16、17日だったことがウエートを占めているように思う。

 戦後80年の8月。石破さんは、6日の広島の平和記念式典のあいさつの最後を被爆歌人、正田篠枝さんの〈太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり〉の短歌を2度読んで締めくくった。

 また9日の長崎平和祈念式典では、被爆した長崎医大(現・長崎大医学部)の永井隆博士の著書の一節〈ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ〉を自身、クリスチャンでもある首相が、あいさつに盛り込んでいた。 さらに15日。全国戦没者追悼式の式辞では2013年の故・安倍首相以来、消し去られていた加害責任に言及。〈あの戦争の反省と教訓を胸に刻まねばなりません〉と「反省」の言葉を12年ぶりに復活させたのだ。

 こんな石破さんの姿勢こそが、世論調査の追い風になっているのではないかと思えてならない。

 だが石破おろしの議員は「3つの選挙こそが国民の意思」と、民意をそっちのけにして言い張る。こんな姿勢こそが、自民凋落を招いているのではないか。

 それにしても情けないのは野党だ。スリーアウトチェンジで次の出番はあんたたちじゃなかったのか、なんてボヤいても始まらない。〈8月や 6日9日15日〉。石破さんのあいさつや、式辞をあらためて読み返してみる、戦後80年の夏である。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年8月25日(月)掲載/次回は9月8日(月)掲載です)

 

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2025年8月11日 (月)

碑や礎に刻まれた文字の重さ

-「黒川の女たち」と沖縄タイムス-

 広島原爆忌の6日、大阪の小さな映画館で「黒川の女たち」を見て私は、あらためて碑や礎(いしじ)に刻まれた文字の重さを感じた。

 岐阜県黒川村(現・白川町)の黒川満蒙開拓団は旧満州・吉林省に690人が入植。だが1945年8月、突然のソ連侵攻。すでに男手は兵隊に取られ、年寄りと女性、子どもだけになった開拓団は、ソ連兵や現地人に度々襲われ、いくつかの団は集団自決した。

 そんなとき黒川開拓団にソ連軍から女性を提供すれば守ってやる、いわゆる性接待を持ちかけられ、15人の女性が日夜、兵の相手をさせられ、団は異例の約3分の2、451人の帰国をなしとげた。

 だが帰国した女性たちは2度、地獄を見る。団は性接待について箝口令を敷き、一方で女性たちには堪えがたい誹謗中傷の言葉が浴びせられた。

 約30年後、招魂碑とともに建てられた「乙女の碑」も、そのことには一切触れていない。そうした中、90歳が近づいた女性たちは次々に口を開き、ついに乙女の碑の横に、性被害の実態を刻んだ新たな碑を建てるまでにこぎつけた。

 映画は、そんな女性たちの証言と、その苦悩を知りつつ屈託なくまとわりつく孫やひ孫を描く。女性たちが新たな碑に寄せる思いは、たった1つ「なかったことには、できない」だ。

 碑に刻まれた思いといえば、7月12日の朝日新聞夕刊〈24万2567の名 誓う52㌻ 礎に刻まれた戦没者 全員掲載 沖縄タイムス 伝えた命の証〉には激しい衝撃を受けた。地元で「沖タイ」と親しまれるこの新聞は、平和の礎に刻まれた米兵を含む24万余の戦没者の名前を13日間、52㌻の紙面を使って掲載したのだ。

 最終は沖縄慰霊の日の前日、6月22日。平和を希求するに、これほどの紙面がほかにあるだろうか。52㌻全てをつなぐと、南の島に咲く月桃の花が浮かぶ小粋な作り。ちなみに月桃の花の花言葉は―「強い決意」。そして「優雅」とあった。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年8月11日(月)掲載/次回は8月25日(月)掲載です)

 

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