小さな映画館で見た「能登デモクラシー」の笑顔
-テレビ放送のその後も…-
先日のこのコラムで三重テレビが日本記者クラブ特別賞を受賞したことにふれ、「小さな局がテレビの底力と意地を見せてくれた」と書いた。今度は小さな映画館で見た地方局、石川テレビの「能登デモクラシー」に同じ思いを抱いた。
監督の五百旗頭幸男さんは富山の局に在任中、市会議員の政務活動費問題に切り込み、市議14人を辞職に追い込んだ。石川テレビに転職してからも、ゆがんだ県政に的を当てた「日本国男村」などを制作してきた。
「能登デモクラシー」の舞台は穴水町。能登半島の真ん中。海に建てた「ボラ待ちやぐら」で日がなボラの群れが来るのを待つ漁法が伝わる町は、過疎化の最終段階といわれながら、町民はいたってのどかで穏やかだ。だけど、それは裏を返せば惰性、忖度、予定調和。議会は常に10人の議員の全員一致。長老議員には20年間、1度も質問に立ったことがない人もいる。
テレビカメラは、そんな町で手書きの新聞「紡ぐ」を作り、500部を手渡しで配る80歳の滝井元之さんを追う。町長が理事長をつとめる福祉法人が国費と町費で建てようとしている多世代交流センター。〈二元代表制ってご存じですか〉〈議会は町長にこんな姿勢でいいのですか〉。「紡ぐ」は静かにこう問いかける。
そんな取材の真っただ中の昨年元日、甚大な被害の能登半島地震が起きた。それから4カ月後の5月。五百旗頭さんたちは悩みながらテレビ版の放送に踏み切った。こんな時になぜ、という町の拒絶反応。何より滝井さんへの風当たりが怖い。
だが、それらは全部杞憂に終わる。映画版はテレビ放送のその後も追う。仮設住宅で新聞を手渡す滝井さんに「待っとったよ」と住民の笑みがはじけ、びっくりするほどカンパも集まった。
映画のラストは、穏やかな海でボラ待ちやぐらが右に左に、かすかに動き始めたように感じた。地方のテレビ局が、またキラリと光る仕事をしてくれた。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2025年6月16日(月)掲載/次回は6月30日(月)掲載です)
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