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2024年11月

2024年11月27日 (水)

風化に抗い続ける未解決事件被害者家族

-名古屋市西区主婦殺害事件-

 名古屋市西区のマンションの一室。玄関のたたきには、変色しているが、靴底についた血の痕。食卓のコップも、壁のカレンダーも事件の日のままだ。

 1999年11月13日白昼、この部屋で高羽奈美子さん(当時32)が刃物で殺害された事件から25年がたった。

 遺体発見時、食卓の子ども用のイスで泣きもせず、ちょこんと座っていた当時2歳1カ月だった航平さんは、27歳になった。

 事件から15年の節目。2014年に、やはりこの主なき部屋で取材した夫の悟さん(68)は当時、このまま部屋を借り続けるか悩んでいたが、「血の痕をはじめ、手がかかりは少しでも残しておきたい」と結局、そのまま借り続け、払った家賃は25年間で2188万円にのぼるという。

  部屋をそのままにする一方で、高羽さんは航平さんを育てながら前へ前へと歩む年月だった。「この子が大人になっていく中で懸命に犯人捜しをしている父の姿を見せたかった」。そしてもう一つ。「奈美子に限らず、犯罪被害者の死を決して無駄にしてはならないと思い続ける毎日でした」。

 25年で大半が入れ替わった所轄署の警察官を現場に招いて、事件の検証と、これまでの思いを知ってもらう。風化という流れは、自分の事件だけに止まらない。世田谷一家殺害事件の遺族をはじめ、被害者家族で作る「宙(そら)の会」の代表幹事をつとめて15年になる。

 「悲しみと同時に生活もどん底に突き落とされた被害者への国の対応は、余りに冷たい」「きちんと管理できればDNAはもっと捜査に有効に使えるはずだ」

 そうしたことを訴える日々に、うれしい出来事が飛び込んできた。航平さんがこの秋、結婚。お相手は奈美子さんのママ友の娘さん。0歳、1歳児同士で遊んでいた2人が、なんと高校の同じクラスで再会したのだ。

 「奈美子が結んでくれた縁なのに…」。高羽さんの声は未解決事件への重く悔しい思いをにじませていた。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年11月25日(月)掲載/次回は12月10日(火)掲載です)

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2024年11月13日 (水)

社会性 先見性のカケラもない判決

-17年前の闇サイト強盗の無念-

 連日、「闇バイト事件」のニュースにかかわっている。75歳男性は縛られて殺害された。暗証番号を聞き出すため長時間、車に監禁された女性もいる。どれほど怖かったか。背筋が凍る

 ここ数年、海外から犯行を指揮したルフィ事件など、サイトを悪用した犯行が後を絶たない。そんなとき署名を呼びかける街頭で、ご自宅で何度もお目にかかった名古屋の磯谷富美子さんの姿が胸に浮かんでくる。

 磯谷さんの1人娘、利恵さん(当時31)は17年前の07年8月、帰宅途中の路上で3人の男が乗ったワゴン車に引きずり込まれた。3人はネット上の「闇の職安」で知り合った「闇サイト強盗犯」。利恵さんの顔に粘着テープを23回巻き付けた上、レジ袋をかぶせてカードの暗証番号を聞き出し、さらに31回テープで巻いた。利恵さんの「死にたくない」という声がかすかに聞こえると「こいつ、まだ死なない」と言って頭を40回ハンマーでたたいて殺害。遺体を岐阜の山中に遺棄した。

 1歳9カ月で父を白血病で亡くした利恵さんは、母と一緒に住む家のため800万円を貯金。犯人に教えた暗証番号は、うその「2960」(憎むわ)だった。

 娘の最期を知った富美子さんは「犯人を死刑に」と署名活動を始め、1年半後の名古屋地裁判決までに実に33万人の署名を集めた。

 だが地裁判決は2人を死刑としたものの、仲間割れから警察に密告した男を自首扱いにして無期懲役の判決。さらに控訴審、名古屋高裁は母の気持ちを逆なでするように死刑判決の1人を無期懲役(後に別の殺人事件が発覚、死刑に)に減刑した。

 減刑の理由として高裁は「死刑を回避できないほどの悪質性はない」としたうえで「ネットの闇サイト悪用も過度に強調する必要はない」と判断。

 「闇サイト」から「闇バイト」に。この高裁判決の裁判官たちは17年後の今をどう見ているのだろうか。社会性、先見性のカケラもない、お粗末な司法。人々が闇に怯える日々は、まだまだ続く。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年11月12日(火)掲載/次回は11月25日(月)掲載です)

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