「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ
-「福井女子中学生殺害事件」-
袴田事件では物的証拠を捏造し、福井の事件では証言を捏造する。検察、警察の許し難い不正が、また暴き出された。38年前、1986年に起きた「福井女子中学生殺害事件」で殺人罪に問われ、7年間服役した前川彰司さん(59)の再審請求に対して、名古屋高裁金沢支部は先週、再審を決定。きのう28日開始が確定した。
私は20年前、出所直後に入院した前川さんに代わって、ひとり冤罪を訴え続けるお父さんや現地を取材。決定当日は福井テレビにリモート出演させていただいた。
それにしても、この金沢支部の決定は検察の証拠捏造を弾劾した袴田さん無罪判決以上に、これでもか、とばかりに警察、検察を断罪、糾弾。たたきのめしている。
突然、前川さんを名指して「犯人だ」と言い出した拘留中の暴力団員と、女子中学生事件の捜査員は再々接触。暴力団員の留置場での処遇や取り調べ中の覚醒剤事件で刑を軽くできないか、何度も話し合っていた。
さらに1審福井地裁の前川さん無罪判決にあわてた検察は、2審の公判に「犯行当日、シャツにまっ赤な血をつけた前川さんを見た」とする男を証人に立てた。だが、この男は今回の再審審理で「出廷を条件にあの時、顔見知りの警官から結婚祝いの名目で金をもらった」と証言。検察に対して、その時の祝い袋まで出してきた。
こうした検察、警察について、決定書で裁判長は「なりふり構わぬ捏造」としたうえで「(前川さんだけでなく)国民に対する裏切り」とまで激しく指弾している。
福井事件、袴田事件という重大な殺人事件でさえ、なりふり構わぬ捏造を繰り返す警察、検察。ならば万引、痴漢、少年犯罪…。一体、この国で何万、いや何十万の人々が、でっち上げられた証拠、証言によって生涯、「犯罪者」の汚名をかぶせられていることか。
近々晴れて無罪が確定する前川さんは、それでもなお、「まだ戦いは続く」と言う。戦うのは、決して前川さんだけではないはずだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年10月29日(火)掲載/次回は11月12日(火)掲載です)
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