おねだり知事の問題はそこじゃない
-公益通報者保護 あり方を問う-
事態が明るみに出た当初から私は、問題はそこじゃないと言い続けてきたが、やっと県議会百条委員会もその点を追及し始めた。
「おねだり知事もっくん」なんて異名もついた斎藤元彦兵庫県知事。ワインやカニのおねだりや、机たたきに付箋投げのパワハラはもちろんいけない。だが背筋が凍りついたのは、県の公益通報窓口に知事の行状を告発した県の前局長が死亡していることだ。告発を知った知事は、同時に名指しされた県幹部を使って〝犯人捜し〟。パソコンを押収して通報を認めさせた。
だけど現行の公益通報者保護法では通報を受けた人が秘密を漏らした場合にだけ罰則があって、例えばセクハラを告発された社長が社員を使って通報した女性を特定させても、法律は「するべきではない」としながら、おとがめはなし。通報者保護法どころか、実際は通報者あぶり出し法なのだ。
実態を聞いた知り合いの女性は「身の毛がよだつ法律。私は間違っても利用しない」と切って捨てた。
私が出演している東海テレビの番組で取材したところ、名古屋の公益法人の職員は国の補助金の不正請求を内閣府に通報したら、あろうことか内閣府が法人に公益通報があったと連絡。職員は法人から「葬り去ってやる」と脅されたという。
また、和歌山市でも公益通報した市の職員が嫌がらせを受けて自死するなど、すでに何人もがこの法律の落とし穴にはまっている。
さすがにメディアもこの問題に気づいて法改正を促す報道が出始めたが、それを見て、またびっくり。〈公益通報者保護 罰則を検討 消費者庁〉(朝日新聞)。
なんと知事のパワハラも会社内のセクハラも、15年前、マツタケなど食品の産地偽装が問題になって設けられた消費者庁が、いまもって所管しているのだ。
連日、浮かれた報道が続く与野党の総裁、代表選。本来の政治とメディアの役割は、そこではないはずだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年9月16日(月)掲載/次回は9月30日(月)掲載です)
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