なぜこうまで米軍にひれ伏すのか
-辺野古埋め立て 米軍性犯罪隠し-
いま東京、大阪のミニシアターで「骨を掘る男」という変わったタイトルの映画が上映されている。6月23日の慰霊の日を前に、私はその男、具志堅隆松さん(70)を沖縄に訪ねた。
自らを「ガマフヤー」と呼ぶ具志堅さんは、かつての戦争で県民や兵隊20万人が亡くなった沖縄で、いまも壕(ガマ)に眠る遺骨を掘り(フヤー)続けている。案内していただいた南部の平和創造の森近くの壕をはじめ、これまで400体の遺骨を掘り出したという。
「NO WAR」と書かれた帽子につけたランプの明かりが頼りの手作業。遺骨の近くに散らばるキセルとカンザシ、乳歯は、祖父と嫁、孫を想像させる。あごの骨が砕けた遺骨は小銃で自害した兵士のものか。
だが、その具志堅さんが怒りで震えてくるようなことがいま起きつつある。
海底が軟弱地盤で底なし沼のような辺野古新基地の埋め立てに、国などは沖縄南部の土を使う計画だという。沖縄県民が最後に追い詰められた南部は、いまも3000体の遺骨が眠っているといわれている。戦争に散った遺骨を、また戦争のための基地に運ぶのか。具志堅さんたちの怒りは治まらない。
そんななか、またしてもこの1年で計5件の少女を含めた沖縄の女性に対する米兵の性犯罪が明らかになった。だが驚くことに政府と外務省は事件を知っていながら、沖縄県(県民)には県議選と沖縄慰霊の日がすむまでひた隠しにしていた。県民の反米軍感情の高まりを恐れたに決まっている。
女性の生涯消えない傷に思いを寄せることもなく、なぜこうまで米軍にひれ伏すのか。いざというときに「私たちの国は二度と戦争をしない」と言えるのか。慰霊式での高校生の詩が浮かぶ。
大切な人は突然 誰かが始めた争いで 夏の初めにいなくなった 泣く我が子を殺すしかなかった 一家で死ぬしかなかった―
また誰かが争いを始めようとしていないか。しっかりと目を見開いておきたい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年7月8日掲載/次回は7月22日(月)掲載です)
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