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2024年7月

2024年7月22日 (月)

救急隊 見事なプロの仕事ぶり

-側溝にはまったご近所のお年寄り-

 東海テレビ(名古屋)の番組で、三重県松阪市が救急搬送したなかで入院しなかった軽症者に診療費を払ってもらう有料化を導入したというニュースを伝えながら、7月初めの出来事を思い出した。

 朝7時過ぎ。リビングにいた妻が「私は子どもと保育園に行くので」「わかった。ぼくも急いでいるけど、あとは任せて」という緊迫した外からの声を聞いたという。

 あわててパジャマを着替えていると、ものの4、5分でピーポーという音と赤色灯。救急車が目と鼻の先に止まった。家から飛び出すと、道にツエが飛び、深さ30㌢ほどの側溝に90歳を超えていそうなお年寄りが腰からすっぽりはまって首もとに血がにじんでいた。

 次々飛び出してきた向こう三軒両隣。4、5人で助け出そうとすると、「ここは救急隊に任せて。それよりこの方をご存じありませんか」「ハイ、あの四つ角の向こうのお宅。いま主人が知らせに行きました」。

 3人の救急隊員は声をかけながら、ゆっくり時間をかけてお年寄りを溝から抱え出し、「大丈夫、歩いて帰ります」と言う本人の言葉をやんわり押さえて「血が出ているし、脳の検査もしましょう」とストレッチャーに乗せ、私たちには帽子を取って「応急手当ての後、病院に搬送します。ご協力に感謝します。どなたか残って、ご家族が見えたら救急車をノックしてもらえると助かります」。かくしてご主人が連絡に走った奥さまを残して、私たちも解散となった。

 夜遅く帰宅すると妻が、夕刻、お年寄りのご家族がお礼にまわって来られたという。結局、保育園に向かった女性と、119番してくれた男性はわからずじまいだったが、お年寄りの首もとは10針も縫う、意外と深い傷。「みなさんと救急隊のおかげです」と何度も頭を下げていたという。

 いささかご近所自慢になるが、みんなでできることは協力し、あとはプロの救急隊におまかせする。当たり前だけど、梅雨空に少し晴れ間を見た思いだった。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年7月22日掲載/次回は8月5日(月)掲載です)

 

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2024年7月 8日 (月)

なぜこうまで米軍にひれ伏すのか

-辺野古埋め立て 米軍性犯罪隠し-

 いま東京、大阪のミニシアターで「骨を掘る男」という変わったタイトルの映画が上映されている。6月23日の慰霊の日を前に、私はその男、具志堅隆松さん(70)を沖縄に訪ねた。

 自らを「ガマフヤー」と呼ぶ具志堅さんは、かつての戦争で県民や兵隊20万人が亡くなった沖縄で、いまも壕(ガマ)に眠る遺骨を掘り(フヤー)続けている。案内していただいた南部の平和創造の森近くの壕をはじめ、これまで400体の遺骨を掘り出したという。

 「NO WAR」と書かれた帽子につけたランプの明かりが頼りの手作業。遺骨の近くに散らばるキセルとカンザシ、乳歯は、祖父と嫁、孫を想像させる。あごの骨が砕けた遺骨は小銃で自害した兵士のものか。

 だが、その具志堅さんが怒りで震えてくるようなことがいま起きつつある。

 海底が軟弱地盤で底なし沼のような辺野古新基地の埋め立てに、国などは沖縄南部の土を使う計画だという。沖縄県民が最後に追い詰められた南部は、いまも3000体の遺骨が眠っているといわれている。戦争に散った遺骨を、また戦争のための基地に運ぶのか。具志堅さんたちの怒りは治まらない。

 そんななか、またしてもこの1年で計5件の少女を含めた沖縄の女性に対する米兵の性犯罪が明らかになった。だが驚くことに政府と外務省は事件を知っていながら、沖縄県(県民)には県議選と沖縄慰霊の日がすむまでひた隠しにしていた。県民の反米軍感情の高まりを恐れたに決まっている。

 女性の生涯消えない傷に思いを寄せることもなく、なぜこうまで米軍にひれ伏すのか。いざというときに「私たちの国は二度と戦争をしない」と言えるのか。慰霊式での高校生の詩が浮かぶ。

 大切な人は突然 誰かが始めた争いで 夏の初めにいなくなった 泣く我が子を殺すしかなかった 一家で死ぬしかなかった― 

 また誰かが争いを始めようとしていないか。しっかりと目を見開いておきたい。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年7月8日掲載/次回は7月22日(月)掲載です)

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