救急隊 見事なプロの仕事ぶり
-側溝にはまったご近所のお年寄り-
東海テレビ(名古屋)の番組で、三重県松阪市が救急搬送したなかで入院しなかった軽症者に診療費を払ってもらう有料化を導入したというニュースを伝えながら、7月初めの出来事を思い出した。
朝7時過ぎ。リビングにいた妻が「私は子どもと保育園に行くので」「わかった。ぼくも急いでいるけど、あとは任せて」という緊迫した外からの声を聞いたという。
あわててパジャマを着替えていると、ものの4、5分でピーポーという音と赤色灯。救急車が目と鼻の先に止まった。家から飛び出すと、道にツエが飛び、深さ30㌢ほどの側溝に90歳を超えていそうなお年寄りが腰からすっぽりはまって首もとに血がにじんでいた。
次々飛び出してきた向こう三軒両隣。4、5人で助け出そうとすると、「ここは救急隊に任せて。それよりこの方をご存じありませんか」「ハイ、あの四つ角の向こうのお宅。いま主人が知らせに行きました」。
3人の救急隊員は声をかけながら、ゆっくり時間をかけてお年寄りを溝から抱え出し、「大丈夫、歩いて帰ります」と言う本人の言葉をやんわり押さえて「血が出ているし、脳の検査もしましょう」とストレッチャーに乗せ、私たちには帽子を取って「応急手当ての後、病院に搬送します。ご協力に感謝します。どなたか残って、ご家族が見えたら救急車をノックしてもらえると助かります」。かくしてご主人が連絡に走った奥さまを残して、私たちも解散となった。
夜遅く帰宅すると妻が、夕刻、お年寄りのご家族がお礼にまわって来られたという。結局、保育園に向かった女性と、119番してくれた男性はわからずじまいだったが、お年寄りの首もとは10針も縫う、意外と深い傷。「みなさんと救急隊のおかげです」と何度も頭を下げていたという。
いささかご近所自慢になるが、みんなでできることは協力し、あとはプロの救急隊におまかせする。当たり前だけど、梅雨空に少し晴れ間を見た思いだった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年7月22日掲載/次回は8月5日(月)掲載です)
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