こころの置き場所を考える1年に
-成人式の苦い思い出-
能登半島地震に日航機と海保機の事故。悲惨な年明けだったが、きょうは成人の日。20歳を迎えられたみなさんを祝いつつ、実は成人式には苦い思い出がある。
20年近く前、朝のテレビ番組で式典妨害に路上飲み、荒れる成人式を厳しく批判。「記念講演の依頼は、お断りすることにしている」とコメントしたところ、新成人の女性から「悲しい気持ちです」と便りが届いた。
〈私のまわりの多くの若者は、進路に迷い、恋に悩み、蹴つまずいて、転んで…それでも必死に前を向いて歩こうとしています〉
最後に「そんな若者のことも忘れないで」とあった。
そういえば、昨年亡くなられた伊集院静さんは毎年、成人の日のサントリーの新聞広告に一文を寄せられ、自身のエッセーでも「行事の中で成人式が好きだ」と、こんなことを書かれている。
小学校時代の楚々とした美しい女性の先生の言葉。「人には〝こころ〟というものがあります。そのこころが目の前にひろがるものを、美しいと感じたり、やさしくされた時に、人のぬくもりを思ったりします」。 それを振り返りつつ、自身の成人への思いをつづる。
〈大人になるということは、この〝こころ〟の置き場所をきちんとすることではないかと思う。こころの置き方ひとつで、物事の見方、捉え方、処し方が変わってくるように思う。〝こころの置き方〟とは、その人の〝構え〟と言うか、覚悟である〉
つらく悲しい幕開けとなってしまった新しい年だが、みなさんとともに、こころの置き場所、物事の見方、捉え方、処し方を考える1年にしたい。そんなことを思う2024年初春である。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年1月8日掲載)
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