懸命の叫び声と責任逃れの声と…
-震災と羽田の事故から-
今も厳しい状況が続く能登半島地震と、翌日の日航機と海保機の事故から半月。私の胸にはいまだに女性たちの声や姿が焼きついている。 震災発生の日、NHKテレビから津波警報が出た現地の映像とともに、山内泉アナの叫び声が響いた。「逃げて。今すぐ避難して」「大切な人が心配でも、まずは自分の命を」…。
結果、局地的には5㍍の津波。海辺ではない地域でも、どれほど多くの人が危険な家屋から避難したことか。朝日新聞の「声」欄にも「『逃げて』力強いテレビの連呼」の投稿があった。
聞けば山内アナの初任地は金沢放送局。見知らぬ土地で出会ったあの顔、この顔を思い浮かべていたのだろうか。
翌2日の日航機炎上事故。乗客が撮った映像には煙が立ち込めるなか、怖がる子どもに目配りしながら「鼻と口をふさいで姿勢を低くして」「荷物は持たないで」と必死に叫ぶCAの女性の姿があった。わずか18分で乗客367人全員の脱出。海保機の不幸もあって称賛の声は上げづらくても、どれほどの国民が「ありがとう」とつぶやいたことだろうか。
その一方で、がっかりすることにも出合った。5日夜、新幹線を新大阪駅で降りようとすると、座席にスマホの忘れ物。折よくデッキにいた警備員に伝えると、ここまでの乗務だったのか、嫌そうな顔をして「車掌が気がつくでしょう」と言って降りて行ってしまった。
忘れ物は業務外かも知れないが、こんな姿勢で1323席の乗客の安全を守れるのか。常々思っているのだが、「運転士、車掌は○○」という車内放送に警備員の名も入れたらどうか。それだけでも気の持ちようが変わってくると思うのだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2024年1月15日掲載)
| 固定リンク
「日刊スポーツ「フラッシュアップ」」カテゴリの記事
- 風化に抗い続ける未解決事件被害者家族(2024.11.27)
- 社会性 先見性のカケラもない判決(2024.11.13)
- 「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ(2024.10.30)
- 追い続けた寅さんに重なって見える(2024.10.16)
- どうか現実の世界に戻ってほしい(2024.10.02)