署員の自己弁護と組織の保身しかない
-愛知の留置場虐待死事件-
これぞ自浄能力を失った組織を象徴する捜査ではないか。昨年12月、愛知県警岡崎署の留置場で精神疾患のある40代の男性が虐待死した事件で、県警は先日、署員9人を業務上過失致死容疑などで書類送検した。こうした密室での集団犯罪は一刻も早い捜査が不可欠なのに、逮捕もせずに丸1年。その間に証拠を隠し、口裏も合わせておいて下さいということだったのか。
さらに、同時に特別公務員暴行陵虐罪に問われたのは男性を足蹴にした幹部ら2人。他の7人は業務上過失致死容疑のみ。5日間も戒具で縛り上げ、持病の薬も与えず、真冬に和式便器に頭部を押し込んで冷水を浴びせる。これが過失なのか。
そこには代わる代わるやってくる警官の暴行の末、留置場の冷たい床で息絶えた男性や変わり果てた息子の姿に肩を震わせる父親。被害者への悔恨の情はみじんもない。あるのは署員の自己弁護と組織の保身だけ。
折しも京都府警の警部補は、特殊詐欺の防犯活動で知った高齢者宅などで1千万円を超える窃盗を繰り返していた。中国四国管区警察局幹部は警官の制服を着て無理やり風俗女性と性交した。大阪府警の25歳の女性警官は高齢女性2人から約1千万円をだまし取った詐欺グループの受け子をしていた。そこにも「まさか警察にこんな目に」と悔しさに泣く被害者が必ずいるはずだ。
だが、警察庁は今回の岡崎の事件を受けて、愛知県警などに留置施設の巡回特別査察を指示したという。
一体、時間も場所も事前に通告した査察が再発防止に何の役に立つのか。身内に甘い、なあなあ体質に、ピント外れ。これもまた組織ぐるみのようである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年12月11日掲載)
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