特定少年への死刑求刑に揺れる心
-甲府の裁判員裁判の行方-
好意を寄せていた女子高生に交際を断られたことから、未明、この女性宅に侵入、両親を殺害したうえ家に放火した被告(21)の甲府地裁裁判員裁判で先週、検察は極刑の死刑を求刑した。
このニュースを報じた新聞のうち毎日、東京などは事件当時19歳だった被告を匿名、地元の山梨日日、朝日、読売などは実名報道と対応が分かれた。
昨年4月、少年法が改正され、これまで原則匿名だった18、19歳は特定少年と位置づけられて、検察はこの事件で初めて少年の名前を公表。匿名、実名報道はテレビも含め、各社の判断に委ねられた。
同時に少年犯罪の厳罰化の声に応えて極刑の死刑も妥当となり、今回、検察は「残酷な犯罪で反省の態度もない」として死刑を求刑した。
2階から逃げ出して無事だった女子高生を襲うのに邪魔になると殺害された両親や同時に切りつけられた妹。一家の無念さを思うと、「凶悪犯罪に年齢は関係ない。命で償うべき」とする検察の主張も当然と感じる。
その一方で「被告の成育過程は不安定で、人格は完成しておらず、更生の可能性は残されている」として、死刑回避を求める弁護側の訴えにも、心が動く。
人生100年時代といわれるなか、この先、半世紀をはるかに超えるであろう被告の人生で、犯行を心から自省し、更生の道を歩むことは望むべくもないのか。
長年、事件を取材してきた私の心が揺れるなか、21歳の被告は、どんな判決であろうと裁判員裁判を受け入れ、控訴はしないとしており、1審で刑が確定する。
あらためて人を裁くことの難しさを感じるなか、判決はちょうど1カ月後、来年1月18日に言い渡される。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年12月18日掲載)
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