「相手も人間」今こそ声あげるべき
-核使用の話出たイスラエル-
はるか1万㌔離れていても、いまこそ私たちの国が声をあげるべきではないか。イスラエルとハマスの軍事衝突はガザ地区の死者が1万人を超えた。うち子どもが4000人以上。10分に1人、子どもが殺されている。
ユダヤ人国家のイスラエル対パレスチナ。宗教、歴史、大戦時の欧米の二枚舌、三枚舌。絡みあった憎悪の糸は、ほどけそうにない。
そんなとき森重昭、佳代子さん夫婦の語りを、朝日新聞編集委員の副島英樹さん(広島総局駐在)が編集された「原爆の悲劇に国境はない」を開いてみた。
森重昭さんは、2016年に現職米大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領が数十秒間、黙って抱擁し続けた、あの場面をご記憶の方も多いと思う。
8歳で被爆した森さんは、通っていた国民学校の校庭で荼毘にふされた中に米兵らしい白人の遺体があったことを知り、成人してから、計12人と判明した米兵の身元確認と遺族探しを始めた。だが86歳になる今日までに、自国が投下した原爆で犠牲になった米兵全員の身元は突き止めたが、遺骨を帰還できたのは2人にとどまった。
そうした中、何百、何千回問われた言葉は「なぜ、原爆で14万人も殺りくしたアメリカの兵隊のために」だった。そのたびに森さんは「私は米兵を敵とは考えない。相手を人間と見たのです」と答えてきた。
即座に首相が否定したとはいえ、閣僚が核使用まで言い出したイスラエル。いまだ人質を取ったままのハマス。「悪いことなんかしていないのに」と泣きじゃくるガザの子ども。この子たちのためにも遠くアジアの被爆国から声をあげたい。
「相手も人間なんだ」
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月13日掲載)
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