この100年 何も学ばなかった人たち
-福田村事件と検見川事件-
関東大震災から100年の9月1日から少し遅れたが、先日、旧知の森達也さんが監督をされた映画、「福田村事件」を見てきた。そして先週は三重テレビの夕方ニュースで「検見川事件」を取り上げた。
関東大震災の直後、首都を中心に「(朝)鮮人が災害に乗じて暴動を起こす」といった流言蜚語が飛び交い、疑心にかられた群衆に虐殺された朝鮮人は、数千人にのぼるといわれている。
そうした中、千葉県福田村(現・野田市)では讃岐(香川)からやってきた日本人15人の行商団に、訛りや身なりの違いから自警団が「朝鮮人だ」と村人を煽り立て、妊婦や幼児を含め、9人が群衆に虐殺された。
検見川(現・千葉市)では首都から避難してきた三重、沖縄、秋田出身の3人の若者が言葉の違いから「朝鮮人だ」と、いきりたつ群衆に惨殺された。
どの村の人々も長らく口を閉ざした日本の歴史の暗部だった。
「福田村事件」の森監督は、人が群れで生活するようになって、「特に不安や恐怖を感じた時、異質なものを見つけて排除しようとする…この場合、髪や肌の色、国籍、民族、信仰、そして言葉。何でもいい」と言う。
翻って現代の社会。チマ・チョゴリに、アイヌの民族衣装、身なりで人をあげつらう女性議員がいる。「朝鮮人虐殺の記録は政府内には存在しない」と言い張る官房長官がいる。虐殺された朝鮮人の慰霊式に長年送ってきた追悼文を「史実は歴史家の判断にまかせるべき」と言って、突如、取りやめた都知事がいる。
100年、何も学ばなかった人がいる。100年、何かを学ぼうとさえしなかった人がいる―。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月6日掲載)
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