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2023年11月

2023年11月27日 (月)

「いいじゃないの幸せならば」

-ユニークカップル-

 先週11月22日は「いい夫婦の日」。東海テレビ(名古屋)のニュース番組でユニークなカップルを紹介させてもらった。岐阜県が今年制定した「パートナー宣誓制度」の第1号、谷村祐樹さんと中村文亮さんの日常を淡々と追った。

 5年前、青年海外協力隊で知り合い、同性婚が認められていない日本で、病院の付き添いなどが制度によって「家族同等」となった2人。家の掃除のことでちょっぴりもめたり、ゲームをしたり。ネコも一緒のごく普通の家庭が、そこにある。

 もちろん、これまで平坦な道を歩いてきたわけではない。一時は「この世にいてはいけない存在と思い詰めた」という谷村さん。中村さんは「長男は家を継ぐ、墓を守るという厳格な家で苦しかった」という。

 そんな2人が、いま共通して抱く思いは「たまたま同じ性の人を好きになっただけ」。マイノリティーや同性婚の権利を声高に求めるのではなく、「それぞれの人の人生が、それぞれ祝福されたら」と願っている。

 11月22日を前に名古屋では、NPO法人が愛の形に平等を求めて全国で展開する「私たちだって〝いいふうふ〟になりたい展」が開かれた。その会場には幸せそうに笑い合う2人のポートレートも飾られた。

 平仮名の「ふうふ」には、夫夫、婦婦、夫婦。このどれもが当てはまるという。

 2人を追ったニュースの終わりは、友人たちのフラワーシャワーを浴びるささやかなウエディングシーン。スタジオの私の胸には70年代、佐良直美さんが歌った「いいじゃないの幸せならば」と「世界は二人のために」が、続けて流れているようだった。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月27日掲載)

 

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2023年11月20日 (月)

至極まっとう「阪神日本一と万博を絡めるな」

-合同Vパレードクラファン-

 大阪では、いささか肩身の狭い巨人ファンの私も拍手を送った38年ぶりの阪神日本一とオリックスのリーグ優勝。ところが、この23日(祝日)に予定されている大阪・御堂筋、神戸・三宮の優勝パレードの雲行きが怪しくなってきた。運営費は民間で、と大阪府などが提唱。目標5億円で始めたクラウドファンディングへの寄付がさっぱりなのだ。開始から1カ月近くたっても2割弱の1億円足らず。一体、ファンはどうしたのか。
 
 読売新聞(大阪版)がズバリ、「大阪・関西万博と関連づけたことだ」と書く。バレードの名称に「万博500日前」をつけ、ファンドの発表には、あのなんともいえないキャラクターも登場。これに反骨、反権力の浪速っ子がカチンときた。 この大阪万博、当初予算の1・9倍、2350億円に膨れ上がっているところに、350億円かけて世界一巨大な木造建物(リング)をすでに建築中と知って、国民の多くも猛反発。共同通信の世論調査では、大阪万博について68・6%の人が「不要」。つまり7割がやめろ、と言っている。

 ファンドに寄せられた声には「阪神日本一と万博を絡めるな」「政治利用は控えるべき」といったものもあったという。至極真っ当。まさに♪獣王の意気高らかに…ではないか。

 大阪府などは財界の寄付を当て込んでいるが、そんなお金なんかなくても大丈夫。03年、星野阪神優勝パレードでは、まっ先に「障害者・子ども席」を用意した球団と阪神応援団。ステキなパレードを期待しつつ、かつてのNYメッツ優勝にあやかった当日の空模様を。

 ―御堂筋は晴れ! ところによって紙吹雪でしょう。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月20日掲載)

 

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2023年11月13日 (月)

「相手も人間」今こそ声あげるべき

-核使用の話出たイスラエル-

 はるか1万㌔離れていても、いまこそ私たちの国が声をあげるべきではないか。イスラエルとハマスの軍事衝突はガザ地区の死者が1万人を超えた。うち子どもが4000人以上。10分に1人、子どもが殺されている。

 ユダヤ人国家のイスラエル対パレスチナ。宗教、歴史、大戦時の欧米の二枚舌、三枚舌。絡みあった憎悪の糸は、ほどけそうにない。

 そんなとき森重昭、佳代子さん夫婦の語りを、朝日新聞編集委員の副島英樹さん(広島総局駐在)が編集された「原爆の悲劇に国境はない」を開いてみた。

 森重昭さんは、2016年に現職米大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領が数十秒間、黙って抱擁し続けた、あの場面をご記憶の方も多いと思う。

 8歳で被爆した森さんは、通っていた国民学校の校庭で荼毘にふされた中に米兵らしい白人の遺体があったことを知り、成人してから、計12人と判明した米兵の身元確認と遺族探しを始めた。だが86歳になる今日までに、自国が投下した原爆で犠牲になった米兵全員の身元は突き止めたが、遺骨を帰還できたのは2人にとどまった。

 そうした中、何百、何千回問われた言葉は「なぜ、原爆で14万人も殺りくしたアメリカの兵隊のために」だった。そのたびに森さんは「私は米兵を敵とは考えない。相手を人間と見たのです」と答えてきた。

  即座に首相が否定したとはいえ、閣僚が核使用まで言い出したイスラエル。いまだ人質を取ったままのハマス。「悪いことなんかしていないのに」と泣きじゃくるガザの子ども。この子たちのためにも遠くアジアの被爆国から声をあげたい。

 「相手も人間なんだ」

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月13日掲載)

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2023年11月 9日 (木)

主な活動予定2023年10月~

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2023年11月 6日 (月)

この100年 何も学ばなかった人たち

-福田村事件と検見川事件-

 関東大震災から100年の9月1日から少し遅れたが、先日、旧知の森達也さんが監督をされた映画、「福田村事件」を見てきた。そして先週は三重テレビの夕方ニュースで「検見川事件」を取り上げた。

 関東大震災の直後、首都を中心に「(朝)鮮人が災害に乗じて暴動を起こす」といった流言蜚語が飛び交い、疑心にかられた群衆に虐殺された朝鮮人は、数千人にのぼるといわれている。

 そうした中、千葉県福田村(現・野田市)では讃岐(香川)からやってきた日本人15人の行商団に、訛りや身なりの違いから自警団が「朝鮮人だ」と村人を煽り立て、妊婦や幼児を含め、9人が群衆に虐殺された。

 検見川(現・千葉市)では首都から避難してきた三重、沖縄、秋田出身の3人の若者が言葉の違いから「朝鮮人だ」と、いきりたつ群衆に惨殺された。

 どの村の人々も長らく口を閉ざした日本の歴史の暗部だった。

 「福田村事件」の森監督は、人が群れで生活するようになって、「特に不安や恐怖を感じた時、異質なものを見つけて排除しようとする…この場合、髪や肌の色、国籍、民族、信仰、そして言葉。何でもいい」と言う。

 翻って現代の社会。チマ・チョゴリに、アイヌの民族衣装、身なりで人をあげつらう女性議員がいる。「朝鮮人虐殺の記録は政府内には存在しない」と言い張る官房長官がいる。虐殺された朝鮮人の慰霊式に長年送ってきた追悼文を「史実は歴史家の判断にまかせるべき」と言って、突如、取りやめた都知事がいる。

 100年、何も学ばなかった人がいる。100年、何かを学ぼうとさえしなかった人がいる―。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年11月6日掲載)

 

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