小ずるい提案「口を出す前に、まず金を出せ!」
-虐待禁止条例改正案の撤回-
埼玉の自民党県議団が提案した子どもの虐待禁止条例改正案は、すんでのところで撤回された。「親に負担を押しつけるだけ」と県に1000件以上の抗議が殺到したこの改正案。私には子育てや家族観に自分たちの思想信条を巧みにもぐりこませながら、じつは金は1円も出さない。「口は出すけど、金は出さない」小ずるい提案にしか見えなかった。
小学生の子どもだけで登下校させる。子どもだけで留守番させる。子どもだけで公園で遊ばせる―これ、全部虐待に当たるとした。
子どもを置いて買い物に行くな。共働きだろうと、保護者は順番で子どもの登下校に立ち会え。とんでもなく親に厳しいこの条例案。だけど、よくよく見ると、県も市町村も1円も金をかけずに、しんどいことは全部親に押しつけている。
たしかに昨年の小学生の交通事故を見ても全国で330人のうち、129人が登下校時だった。
だからこそ、思い出してほしい。私は一昨年、千葉県八街市で飲酒運転のトラックが下校中の小学生をはねて3人を死亡させた事故の時も、このコラムやテレビで「一刻も早くスクールバスを」と訴えてきた。八街の事故では、当時の菅首相も「バスの導入を真剣に考える」と言明したが、その後はナシのつぶてだ。
いまスクールバスの導入に国から補助が出るのは、全校児童の半数以上が片道4㌔以上を通う小学校だけ。だが、へき地の学校統廃合で4㌔近い距離を通う学校が増え続けている。ならば聞くが、子どもを毎日、往復8㌔、2時間も歩かせるのは虐待ではないのか。
あらためて言う。「口を出す前に、まず金を出せ!」。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年10月16日掲載)
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