あらためて市民のための裁判員裁判とは
-京アニ事件裁判-
死者36人、重軽傷者32人を出した京アニ事件で放火殺人などに問われた青葉真司被告(45)の裁判が連日、京都地裁で続いている。
自身も全身の95%を火傷。生存率数%の状況で、なんとしてでも法廷で本人に語らせたいとした法曹、医療関係者の努力に頭が下がる。
その一方、この裁判でご苦労な日々を過ごしながら、法廷スケッチや映像に一切登場しない人がいる。この法廷では6人の裁判員に加えて、通常3人の補充裁判員を不慮の事態に備えて6人とし、計12人の裁判員が連日、審理に加わっている。
裁判は判決日の来年1月25日まで143日という長丁場。この間、予備日を含めて32回の公判廷が予定されている。これに先立って京都地裁は裁判員の選任手続きを開始。抽選で選んだ500人のうち入院中の人などを除く320人に呼び出し状を発送したが、出席したのは63人。全国平均の23・7%を大幅に下回る12・6%。ところが、このうち14人が辞退。結果、49人の中から12人を裁判員とした。
猛暑の続く9月から厳寒の来年1月の京都。厳しい公判日程のなか、裁判員になられた方には心底、敬意を抱く。その一方で1年の3分の1以上の日々、月平均5日を審理に当てるというのは、子育て中の働く女性はもちろん、普通の会社員でもそう簡単に引き受けられる話ではないだろう。
そうなると一般市民の声を裁判に反映させたいという裁判員裁判の目的は、どこかへ行ってしまわないか。
来年は、5年ごとと定められている裁判員制度見直しの年。凶悪極まりない京アニ事件裁判を注視しつつ、あらためて市民のための裁判員裁判を考えてみたい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年9月18日掲載)
| 固定リンク
「日刊スポーツ「フラッシュアップ」」カテゴリの記事
- 風化に抗い続ける未解決事件被害者家族(2024.11.27)
- 社会性 先見性のカケラもない判決(2024.11.13)
- 「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ(2024.10.30)
- 追い続けた寅さんに重なって見える(2024.10.16)
- どうか現実の世界に戻ってほしい(2024.10.02)