最後の行方不明者と執念の捜索
-熱海土石流災害2年-
先週7月3日、熱海土石流災害は発生から2年となった。この日、静岡朝日テレビは特別番組を放送。私も出演させてもらった。
消防に通報があった午前10時28分、伊豆山地区では28人の犠牲者の遺族らがサイレンの音とともに黙とう。その中に、この日初めて遺族の1人として手を合わせる太田朋晃さん(57)の姿があった。
太田さんの母、和子さん(当時80)はあの日、濁流に押し流された自宅にいた。2カ月後、27人の死亡が確認される中、和子さんだけが行方不明のままだった。
その一方、警察の捜索で昨年6月には診察券が発見されたが、和子さんの行方は依然わからず、1年目の追悼式、太田さんはどうしても遺族として参列することができなかったという。
だが14カ月目には運転免許証。そして1年7カ月後の今年2月、私がこの局の夕方ニュース番組、「とびっきり!しずおか」の出演中に「土砂の中から人骨発見」の第一報。その数週間後にはDNA鑑定で和子さんの右前腕部の骨と判明した。
取材に応じてくださった太田さんの仮住まいのアパートの一室には、母の遺影とともに小さな白木の箱に入った遺骨が置かれていた。
猛暑の夏も、極寒の冬も捜索を続ける警察に、太田さんは診察券や免許証が届けられるたびに「これを遺骨と思って…」という言葉が出かかったという。だが、それを押しとどめるように熱海署の幹部から返ってきた言葉は「捜す所がなくなるまで捜します」。
追悼の日、長く長く尾を引くサイレンの中、深く頭を垂れる太田さんの背後に、くる日もくる日も土砂をふるいにかけ続けた警察官の姿が浮かんでくるようだった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年7月10日掲載)
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