日本社会の病が、ごろんと転がっているように見える
-沖縄 慰霊の日に-
取材で沖縄県宮古島を訪ねてきた。地方に足を伸ばした時の私の楽しみは地元紙を読むこと。宮古には宮古新報と宮古毎日の2紙があり、さらに沖縄本島から沖縄タイムスと琉球新報が送られてくる、ちょっとぜいたくな地方紙事情だった。
手にした日の沖縄タイムスのコラム、「大弦小弦」の筆者は編集委員の阿部岳さん。辺野古のある北部支社員だった7、8年前からのお付き合いだ。この日のテーマは先の国会で成立した「LGBT理解増進法」。
〈G7広島サミットで高まった外圧に苦慮し、嫌々制定した情けない事情が伝わる▼性的少数者が、差別の被害に遭っている。必要なのは差別を禁止する法律だった―〉
だが現実はどうか。これまで「国家の暴力」「フェンスとバリケード」(共著)などの著書がある阿部さん。ここにも国家のバリケードが見え隠れしているようだ。
〈日本維新の会、国民民主が「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」趣旨の条文追加を提案…法の性格は一変した。▼…「安心して生活」に客観基準はない。多数者が「不安だ」と言うだけで、性的少数者を抑圧する仕組みができてしまった〉。
そして最後は〈多数者の責任で差別をやめるのではなく、少数者に分をわきまえるよう強要する。日本社会の病が、この前代未聞の法律に凝縮されて、私たちの前にごろんと転がっている〉と結ばれている。
日本の米軍基地の7割を沖縄に押しつけ、辺野古の海に、きょうも土砂を投入し続ける。日本社会の病が、ごろんと転がっているように見えてくる。
沖縄は23日、78回目の慰霊の日を迎えた。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年6月26日掲載)
※第7段落、日刊スポーツの紙面では「日本が米軍基地の7割を沖縄に押しつけ、」となってしまっていますが、本来の原稿はこちらでした。
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