子どもの命をあずかる人の重い大きな責任
-通園バス置き去り女児死亡-
先週、こども家庭庁への思いを書いて、5日の「こどもの日」を挟んで、また子どもにかかわる話。
少し前、河本千奈ちゃんのお父さんが、私が出演している静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」の取材に心の内を語ってくれた。
「いま思えば大切な日々でした。入園の時や家族の誕生日。ケーキを買ってお祝いするのですが、本当にうれしそうで、楽しそうで」
牧ノ原市のこども園「川崎幼稚園」に通っていた3歳の千奈ちゃんは昨年9月、猛暑の中、園長(73)が運転、76歳の派遣社員の女性が乗っていた通園バスに置き去りにされ、亡くなった。全身が赤く腫れ上がり、水筒は空になっていた。
「お風呂から出て千奈の体を乾かし、千奈が『パパ大好き』と手を広げて、私も千奈を抱きしめて。たまにそんなことを思い出して」
お父さんの言葉に合わせて、さまざまな映像が流れる。イチゴを頬張る千奈ちゃん。生まれたばかりの妹に上手にミルクをあげる千奈ちゃん。
その千奈ちゃんが通った川崎幼稚園は、「園を閉じて」という両親の声は届かず、1カ月後に園長を息子が引き継ぐ形で再開された。
「バスに安全装置をつけることが義務化され、事態はよくなると思います。だけど意識の低い職員に、どんな装置を提供しても同じことが起きるのではないでしょうか。それに、千奈は安全装置義務化のために生まれてきたのではないのです」
当時の園長や派遣の女性は昨年末、業務上過失致死容疑で書類送検されている。だけど、車で人を死なせた事故と同じ刑罰でいいのか。子どもの命をあずかる人には、はるかに重い大きな責任があると思うのだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年5月8日掲載)
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