放送法文書めぐる危機感
-抗議声明出さないテレビ-
安倍政権時代、当時の首相補佐官が特定のテレビ番組をめぐって総務省と交わしたやりとりを記録した「放送法文書問題」。当時の高市早苗総務相(現・経済安保担当相)が「怪文書だ」と強弁すると、野党は「公文書だったら大臣を辞任するのか」。そうこうするうちに、問題の本質がどこかに行ってしまったようだ。果たしてこれでいいのか。とりわけ私は問題発覚後のテレビメディアに大きな危機感を抱いている。
この問題で私は朝日新聞電子版、「放送法文書 何が問題なのか」の取材を受けたほか、ポッドキャストでは東京新聞の望月衣塑子記者とトークを繰り広げた。
もちろん、私がテレビでコメンテーターをしていることもあるが、もっと大きな理由は、首相補佐官とやりとりがあった翌2016年、高市総務相が「1番組ごとに判断。内容によっては電波を止める停波もある」と発言、そのことに憤りを感じた田原総一朗さんや鳥越俊太郎さん、青木理さん、それに私など6人のジャーナリストが「私たちは怒っています!」と書いた横断幕を掲げて強く抗議した。そのことをみなさん覚えていて、今回、取材を申し込んでこられたのだ。
このたびも、またあのときのメンバーはそれぞれ発言されている。だが、その一方で、いまテレビ局の中にいる人たち、とりわけNHKを含む各局の報道局長はこの事態に一体、何をしているんだ。私が抱く危機感はそこにある。なぜ「真相を明らかにしろ。停波の流れには強く抗議する」と声明の1つも出さないのか。
4月は各番組が衣替えする改編期。だが、この春は霞どころか、どんよりとした雲の中にいるようである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年4月3日掲載)
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