より陰湿化する捜査と冤罪
-日野町事件「高裁も再審指示」-
「高裁も再審支持」のニュース速報に心の中で拍手を送った。34年前、滋賀県日野町で酒店経営の女性が殺害され、阪原弘さんが無期懲役で服役中、がんで死亡した日野町事件で、大阪高裁は大津地裁の死後再審を支持。無罪がぐんと近づいてきた。私は10年以上前、長男の弘次さんを取材、現場にも足を運んだ。
この再審審理で、またしても警察検察の証拠隠し。被疑者に現場を案内させる引き当て捜査での警察官の誘導や、その際の写真の順番の入れ替え。悪質、悪辣な工作が次々明らかになった。
だが私には、それ以上に許せないことがある。弘次さんによると、弘さんは調べの刑事から結婚したばかりの娘さんの話を持ち出され「嫁ぎ先に行ってめちゃくちゃにしてやる」と脅されて耐えきれず自白したという。その夜、家族の前でウソの自供をしたことを号泣しながらわび、翌日逮捕された。
私の長い事件取材の経験でも、取り調べ中の暴力には屈しなくても、「子どもを学校に行けなくしてやる」など家族のことで脅されて耐えきれる人はまずいない。
取り調べの録音、録画が進む中、手法を変えて家族の職場への聞き込みや親族宅への意味のない家宅捜索。捜査はより陰湿化しているともいう。
相次ぐ冤罪事件の発覚で、国会や日弁連では再審法の抜本的改正や再審審理での証拠開示の制度化といった動きが進んでいる。
私の取材から1年とたたず、75歳で亡くなられた弘さんの霊前に大好きだったお酒と一緒に、再審無罪確定、再審法改正の知らせを一刻も早く届けてほしい。
来週13日(月)、いよいよ発生から57年、袴田事件の東京高裁判断が下される
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年3月6日掲載)
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