心もいっぱいになるこども食堂
-夜はゲイバー 月に1度開店-
年に7、8回出演している三重テレビの報道情報番組、「Mieライブ」の先日の特集は1月末、津市にオープンしたこども食堂だった。
オーナーの花井幸介さん(34)が月末の日曜日に開き、初回のメニューは野菜と肉のカレーにつくね、近所の和菓子屋さん差し入れのみたらし団子。定員40人。こどもは無料で大人は300円。おなかいっぱい食べてもらって、たった1つの条件は必ずみんなとおしゃべりして遊んで帰ること。
そんな条件をつけたのには訳がある。店は普段の夜はゲイバー。花井さんはLGBT、性的少数者だ。友だちにも言い出せないまま隠し通して中学を卒業。家を出て、一時はホームレス生活も経験した。やっと心を許せる仲間に出会って夜の町を転々としていた10年前、父親が末期がんという知らせが飛び込んできた。
駆けつけた花井さんに父は「気がついていたよ。お前の人生。思い通りに生きなさい」。だからおなかがいっぱいになると同時に、こどもも大人も何でも言いあえて心もいっぱいになるこども食堂を作りたかった―。
国会ではそのLGBTをめぐって首相秘書官がオフレコをいいことに、耳をふさぎたくなる差別発言。一方で子育て支援の議論では、かつて女性議員が議場に響く甲高い声で、聞くに耐えない下劣なヤジを飛ばしていたことが改めて報道されている。そんなときにオープンした、夜はゲイバーのこども食堂。
小さなテレビ局が取り上げた、小さなこども食堂がLGBTや子育て、そうしたテーマに、いつの日か私たちが見たいと願っているほのかな光を放ってくれているような気がする。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年2月13日掲載)
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