声を上げる人をたたく理不尽さ
-大川小津波裁判の映画-
200時間ぶりに奇跡の救出、といった報道も途絶え、トルコ大地震の死者は4万人を超えた。そんな中、私は先週末から東日本大震災の被災地にいる。それと時を同じくして昨年、このコラムに「多くの映画館が手を挙げてほしい」と書いた「生きる 大川小学校 津波裁判を闘った人たち」が18日からの東京を皮切りに、全国各地で上映される。
津波で命を落とした74人の児童の親たちが「真相を知りたい」と立ち上がった裁判。仙台高裁は日ごろの避難訓練などで自治体や国に落ち度があったと認定。親たちの全面勝訴となった。
大災害の取材や冤罪報道で私とは長いおつき合いのこの映画の監督、寺田和弘さん(51)は先日、朝日新聞の「ひと」欄にも登場。親たちに浴びせられた「子どもの命を金にするのか」といった中傷に、自身の高校時代、過剰な生徒指導に沈黙していた過去にふれ、異議を唱える小さな声を社会に届けたい、としたうえで、「声を上げる人をたたく社会の理不尽さを考えてほしかった」と訴える。
大阪第七藝術劇場(十三)の26日(日)昼の上映後、寺田さんと私は、津波で妻と父、それに大川小に通う長女を亡くし、生き残った長男の哲也くんの証言、「先生に(高台の)山の方に逃げようと言ったのに聞いてもらえなかった」も市教委にもみ消されてしまった只野英昭さんと3人で約1時間、トークを展開することになっている。
あの大震災から間もなく12年。私たちは声を上げる人をたたく理不尽な社会を打ち破るために、半歩でも1歩でも前に進んだのだろうか。
ひととき、観客のみなさんと一緒に考えてみたい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2023年2月20日掲載)
| 固定リンク
「日刊スポーツ「フラッシュアップ」」カテゴリの記事
- 風化に抗い続ける未解決事件被害者家族(2024.11.27)
- 社会性 先見性のカケラもない判決(2024.11.13)
- 「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ(2024.10.30)
- 追い続けた寅さんに重なって見える(2024.10.16)
- どうか現実の世界に戻ってほしい(2024.10.02)