果たして有罪に持ち込めるか
-「王将」社長射殺事件-
9年前の事件が大きく動いた。2013年12月、「餃子の王将」本社前で早朝、当時72歳の社長が射殺された事件で、京都府警は服役中の工藤会(北九州市)系暴力団幹部(56)を逮捕した。
所属する工藤会は国内で唯一、「特定危険指定暴力団」に指定されている凶悪団体。15年ほど前、市民にまで襲いかかるこの組の幹部と豪壮な組本部を取材した。
だが今回の逮捕、これまで明らかにされている物証としては、現場で吸ったとみられるたばこの吸い殻から検出された幹部のDNA。それに、犯行に使用されたと思われる盗難バイクのハンドルから出た硝煙反応。そして京都~福岡を往復する不審な車のカメラ映像。これくらいしかないのだが、どれも「だからこの幹部が撃った」という証拠にはならない。
更にやっかいなのが動機だ。王将と九州の企業グループが不適切な取引を繰り返し、結果170億円という巨額な融資が焦げついていることが明らかになった。だが、この債務はすでに整理がついているといわれている。暴力団がカネにならないことで動くはずがないのだが、この段階で社長を射殺したところで、だれかの利益になるとは思えない。
なにより王将とこの企業グループ、そして工藤会幹部。この3つの点を結び付ける線がまったく見えてこない。ということは、よほどの隠し玉でもない限り、強引に起訴したところで到底、有罪には持ち込めないのではないか。
だが工藤会は、かつて九州の企業トップどころか、「暴力団は来ないで」と訴えただけのスナックのママにまで襲いかかった「特定危険指定暴力団」。日本の司法の底力が試されている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年11月7日掲載)
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