ふるさとの人々の愛と熱気に包まれた優勝
-天皇杯J2甲府の驚き-
先週日曜のサッカー天皇杯。J2ヴァンフォーレ甲府優勝の驚きがまだ残っている。J1の5チームをなぎ倒し、最後もJ1広島にPK戦で勝利。「甲斐路に天皇杯」の横断幕を掲げたサポーターも喜び半分、びっくり半分のように見えた。
20年近く前、「地域社会とスポーツ」をテーマにしたテレビ番組でチームを取材した。当時、甲府はリーグのお荷物といわれ、累積赤字は4億円。クラブ解散の声も出るなか社長になったのが、いま最高顧問の海野幸一さん(76)だった。
山梨日日新聞の記者出身。スタンドで、そして口説き落としてスポンサーになってもらった居酒屋で、クラブへの熱く、厚い思いを聞かせてもらった。
足を棒にして探し出したさまざまな形のスポンサー。ユニホームの洗濯を買って出てくれたランドリーにはオフシーズン、選手がお返しに働きに行く。海野さんとスタンドにいると、ピッチで倒れた選手を運ぶ担架に大きく「○○整形外科医院」の文字。選手に悪いと思いつつ噴き出しそうになると、サポーターの間にも小さな笑いが広がっていた。
「決して大都市ではない」と海野さんが言う甲府で、手を挙げてくれたスポンサーはいま260社。7億円の収入となっている。
Jリーグ創設メンバーの言葉を思い出す。「ヨーロッパの子どもたちは、わが町のスポーツクラブとオーケストラで、ふるさとへの愛を育まれるのです」。
片やふるさとの人々の熱い思いに包まれてきたヴァンフォーレ甲府。そのチームが見事、持ち帰った天皇杯。あれから1週間余り。甲斐路はずっと秋日和が続いているような気がする。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年10月24日掲載)
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