底抜けに明るく「オレの記念日」
-冤罪事件テーマ映画完成-
冤罪事件という重いテーマを扱いながら底抜けに明るい映画、「オレの記念日」が完成した。無実の罪で29年間服役。晴れて無罪が確定したのに、がんの宣告。久しぶりに会った布川事件の桜井昌司さん(75)は映画の中と同じく元気いっぱいで、宣告された余命の2年を1年以上超えたという。
覚えのない犯行で逮捕さされた日も、無期懲役が確定した日も、息子の無罪を訴えて駅に立ってくれた父が亡くなった日も、49歳で社会に戻った日も…みんな「オレの記念日」にして、はね返してきた桜井さん。
「同じ1日なら楽しくしなくては」と服役中も詩作りに、トランペットの練習に忙しかったという。「不運だけど、不幸ではなかった」と言い切る桜井さんは、いま「冤罪犠牲者の会」を結成する一方で、再審の扉を開ける法改正に向けて忙しく走りまわっている。
そんな桜井さんだが、いまだ再審さえ開かれていない袴田事件など冤罪のことになると、表情を一変させる。明らかに無罪とする証拠があるのに隠し続ける検察。それを見ぬふりをする裁判所。そうした司法を指弾しないメディア。
うその自白をさせた警察官も、無罪の証拠を隠し続けている検察官も、判決は間違っていたと気づきながら心に封印している裁判官も「その人の人生はオレよりずっと不幸なはず。冤罪をなくすということは、そうした人たちを楽にしてあげることでもあるんですよ」。
桜井さんの、この底抜けの明るさが、冤罪事件の暗い奥底までも照らし出してくれるような気がする。
「オレの記念日」は東京、大阪、名古屋の上映に続いて全国を巡回する。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年10月31日掲載)
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