鮮やかに甦る市民の救助活動
-秋葉原無差別殺傷で死刑執行-
秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚(39)の刑が先週、執行された。これまで複数人の執行が通常だったが、この日は1人という異例の執行。毎日新聞によると、日曜白昼の歩行者天国で7人を殺害、10人に重軽傷を負わせた衝撃的な事件だけに、法務当局は執行のタイミングについて検討を重ね、この日単独執行に踏み切った模様だという。
結果、テレビは昼ニュースから。新聞は当日夕刊と翌朝刊でトップ級の扱い。加藤死刑囚は居場所だったネットの掲示板に嫌がらせをされ、「帰る場所がなくなった。怒りをぶつけるために大勢を殺そうと思った」という身勝手な動機。
さらには昨年、小田急線や京王線で起きた無差別殺人未遂放火事件。加藤死刑囚の執行をもって、こうした犯行に対して国が厳然たる態度を示したといえる。
だが事件から14年。何度も現場に足を運んだ私にいま鮮やかによみがえるのは、商店街会長やカフェの女性から何度も聞いたあの日の市民の救助活動だ。
たまたま楽器を買いに来ていた医師や、数日前に救命講習を受けていたという女性ばかりではない。近所のエステ店が「全部運んできた」というタオルで若い男女が服をまっ赤に染めながら必死でけが人の止血をしていた。
事件後、警視庁万世橋署が感謝状を贈った人は実に69人に上った。もちろん私の取材経験で初めてだ。
死刑執行で事件を終わらせてはいけない。心に傷を負った人。社会に居場所をなくした人。寂しさに耐えかねている人。そんな人たちがいつでも帰ってこられる場所を用意しておく。それがいま社会に求められていることではないだろうか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年8月1日掲載)
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