今だからこそ胸に迫る四日市判決
-公害を学ぶ「判決50年展」-
今年は、連合赤軍あさま山荘事件や沖縄本土復帰から50年。さらに四日市公害訴訟判決からも50年。先日、小学生のための公害学習や「判決50年展」を取材した。
巨大コンビナートの煙突から吐き出される有害物質。ぜんそくや肺疾患に苦しみ、企業にも行政にも裏切られ続けた人々が最後にすがった公害裁判。津地裁四日市支部が1972年7月に下した判決はいまも、いや、いまだからこそ一層胸に迫る。
〈企業は経済性を度外視してでも世界最高の技術を動員して公害防止に努めるべきである〉
企業が経済性を度外視したら、間違いなくつぶれる。だが裁判官は「公害を止められないなら、どうぞつぶれてください」と言い切ったのだ。
数少なくなった語り部。当時9歳の娘をぜんそく発作で亡くした87歳の谷田輝子さんに、公害学習でいくつも質問をぶつける小学生。だが、いま私たちの社会はどうか。
6月、最高裁は福島、前橋など4地裁で起こされた福島原発訴訟で、「津波の高さは想定外だった」と国の責任を認めない判決を確定させた。果たして原発は、国の立地条件や規制基準とかかわりなく建設されてきたとでも言うのか。
一方、先月、東京地裁は原発事故で旧経営陣が会社に多大な損害を与えたとして訴えられた株主代表訴訟判決で元会長ら4人の責任を認め、総額13兆3000億円の支払いを命じた。国の防衛予算のじつに2倍。4人が全財産をなげうっても払えるはずがない、現実を度外視した判決。一般市民は、これで留飲を下げておけとでも言うのか。
四日市判決から50年。私たちは歯車をどこに向けて回転させてきたのだろうか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年8月8日掲載)
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