「日本国男村」の行方やいかに
ー民放連、報道部門賞審査で思うー
この7月は、いつもよりいささかハードだった。参院選と直前の安倍元首相銃撃事件。さらに新型コロナ第7波。そんななか、今年は日本民間放送連盟賞報道部門の近畿地区と中部北陸地区の審査を引き受けていた。
長いもので90分。近畿5、中部北陸14の合計19もの作品をじっくり、しっかり視聴して、審査会と審査委員による講評会に臨んだ。
講評会で普段はネットにふれる機会の方が多いという評論家も言っておられたが、時間をかけて丹念に物事を掘り下げていくテレビドキュメンタリーの神髄を見た思いの数日間だった。
結果、近畿地区は関西テレビの「ザ・ドキュメント 罪の行方~神戸連続児童殺傷事件被害者家族の25年~」が最優秀賞となった。
中部北陸地区は決選投票までもつれ込んだが、石川テレビの「日本国男村」が見事、最優秀賞を獲得した。この作品について私は「報道ではなく、教養やエンタメ部門に出してもトップを取れたのでは」と講評したが、じつにユニークなドキュメント作品だった。
これがいまの時代のことかと仰天させる男社会。民族も宗教も同じ色に染め上げていく土地柄。そんな風土に真正面からぶつかったかと思うと、皮肉を込めて斜めから切る。聞けば作品のディレクターは北陸のテレビ局にいたが、その報道姿勢に我慢がならず、同じ北陸の局に移ってこの作品を作ったとか。いわば男の意地、もといテレビマンの意地の一作だ。
これら地区最優秀作の中から9月の中央審査で年間最優秀作品が選ばれ、3カ月以内に全国放送されるという。さてカンテレ、石川テレビ作品のこの先は…。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年7月25日掲載)
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