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2022年7月

2022年7月25日 (月)

「日本国男村」の行方やいかに

ー民放連、報道部門賞審査で思うー

 この7月は、いつもよりいささかハードだった。参院選と直前の安倍元首相銃撃事件。さらに新型コロナ第7波。そんななか、今年は日本民間放送連盟賞報道部門の近畿地区と中部北陸地区の審査を引き受けていた。

 長いもので90分。近畿5、中部北陸14の合計19もの作品をじっくり、しっかり視聴して、審査会と審査委員による講評会に臨んだ。

 講評会で普段はネットにふれる機会の方が多いという評論家も言っておられたが、時間をかけて丹念に物事を掘り下げていくテレビドキュメンタリーの神髄を見た思いの数日間だった。

 結果、近畿地区は関西テレビの「ザ・ドキュメント 罪の行方~神戸連続児童殺傷事件被害者家族の25年~」が最優秀賞となった。

 中部北陸地区は決選投票までもつれ込んだが、石川テレビの「日本国男村」が見事、最優秀賞を獲得した。この作品について私は「報道ではなく、教養やエンタメ部門に出してもトップを取れたのでは」と講評したが、じつにユニークなドキュメント作品だった。

 これがいまの時代のことかと仰天させる男社会。民族も宗教も同じ色に染め上げていく土地柄。そんな風土に真正面からぶつかったかと思うと、皮肉を込めて斜めから切る。聞けば作品のディレクターは北陸のテレビ局にいたが、その報道姿勢に我慢がならず、同じ北陸の局に移ってこの作品を作ったとか。いわば男の意地、もといテレビマンの意地の一作だ。

 これら地区最優秀作の中から9月の中央審査で年間最優秀作品が選ばれ、3カ月以内に全国放送されるという。さてカンテレ、石川テレビ作品のこの先は…。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年7月25日掲載)

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2022年7月18日 (月)

コロナ第7波を切り抜けなければ

-医師からの長文メール-

 安倍元首相が凶弾に倒れ、直後の参院選。そうした中、また暗雲を漂わせていることがある。いつも貴重な情報を寄せてくれる地元、大阪のS医師からのメール。

 〈まことに悲惨な事件。そうしたことにさまざまな対策が必要なことを痛感しています。それはウイルスについても言えることです。

 6月、私の診療所では発熱患者もコロナ陽性者も激減していました。それが7月に入るや否や、感染者が激増。連日、保健所への発生届けを入力しています。

 その半数以上が3回目のワクチンを接種されている方なので、確かに重症化は防げても予防効果は乏しくなっていると感じます。また家族内感染がこれまで以上に多い印象です。

 その一方、近隣ではS病院で職員12人、患者22人が院内感染。周辺の2カ所の公立でも救急医師2人が感染したり、院内発生が起きているようですが、今やクラスターの発生もニュースにはならないようですね。

 ただそうなると、関係する医療従事者が原則10日の自宅待機となるため、救急搬送や入院の制限、予定している手術の延期など私たち開業医にとって大変な事態となるのです。

 さらに酸素吸入の必要がない患者さんは原則自宅療養。久しぶりに往診の要請も増えそうです。そこに4回目ワクチンの接種のピークと重なり、なんとかこの時期を切り抜けなければと思う昨今です〉 

 いつも番組でご一緒している感染症学者の方によると、きょう海の日までの3連休が、ウイルスが「BA.5」に置き換わった第7波の最初のヤマ場だという。明日発表の感染者数が低いことを祈るばかりだ。

 

日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年7月18日掲載)

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2022年7月11日 (月)

東大⚾井手監督「ワンアウト走者三塁」人生楽しむ

-喜寿祝い78歳との対談-

 まことに私事ながら7月8日で私、77歳。喜寿である。毎週出演している東海テレビのニュースデスクが「どなたでも結構。同年代の方との対談を」と粋な企画をしてくれた。同じ年の吉永小百合さんを想定していたようだが、私の希望は井手峻(たかし)さん。78歳。猛暑の中、東京・本郷の東大球場での対談となった。

 井手さんは東大野球部初のドラフト指名選手。1966年中日ドラゴンズ入団。投手、野手として活躍した。球団代表も務めたが2年前、76歳で母校の監督に就任された。

 「いまの選手は勝ちへの執念がすごい。それに部員100人を超えてベンチ入りできなくても、やめる子はまずいない。そう聞いて、私で役に立つならと」

 スタンドの最上段。さっきまで土煙の中にいたのに涼しげな笑顔が返ってくる。就任した年の6大学秋季リーグ。さっそく立教に勝ったのをはじめ、今年春のリーグでは2引き分けと、早稲田に冷や汗をかかせた。

 長打力がないなら単打と足。コーチ、選手がストップウオッチを手に走塁練習を重ね、去年春には28個中24個の盗塁を成功させた。

 「そうやって野球で一番おもしろいワンアウト、ランナーサードのチャンスをなんとか作っていくんです」

 犠牲フライもある。スクイズもホームスチールもある。さあ、どうする。それがいまの東大野球だという。 スタンドに流れるさわやかな風。78歳と77歳。イニングは重ねたけど、ひょっとするとこの人生、いまがワンアウト走者三塁。そんな気持ちになるのだった。

 対談の模様は、東海3県は15日午後6時過ぎから東海テレビで。その他の地域は同テレビのYouTubeでご覧いただけます。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年7月11日掲載)

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2022年7月 4日 (月)

「新たな手口を学んだ悪党」再犯抑止策を

-川越ネットカフェ立てこもり-

 先月22日、埼玉県川越市のネットカフェで女性店員にナイフを突きつけて個室に立てこもり、逮捕されたときダブルピースサインを突き立てていた長久保浩二容疑者(42)。じつはこの男、10年前の2012年11月にも愛知県の豊川信用金庫で女性客や職員を人質に立てこもって逮捕され、私も東海テレビの取材で現場に駆けつけていた。

 この事件で懲役9年の刑で服役、4月に出所したばかりの男が「刑務所に行きたい。死刑になりたい」と、また引き起こした立てこもり。いま司法界では、こうした再犯事案が大きな問題になっている。

 刑法犯は18年連続で減っているのに、罪を犯した人が再び犯罪に走る再犯率は49.1%。つまり2人に1人がまた事件を起こし、うち85%が5年以内の再犯なのだ。

 立てこもり再犯男は信金事件で服役中、東海テレビの記者に手紙を送ってきているのだが、その中で「受刑者の多くは罪の大きさを感じることもなく、それどころか新たな犯罪の手口を学んだ悪党として出所して行くのです」と書いている。

 まさに「おまえが言うか」ではあるが、ことここに至って抜本的な対策を立てるべきではないか。

 先の国会で115年ぶりに刑法が改正され、懲役と禁錮が一本化されて拘禁刑となった。そこに新たに犯罪の誘惑に対するメンタルケア、社会復帰のためのカリキュラムの習得などを盛り込んだ教育刑の創設といったことはできないものだろうか。

 再び犯罪に走った再犯者が刑務所に逆戻りするたびに新たな被害者が生まれる。私たちは犯罪の加害者にならないことは誓える。だが被害者にならないという保証は、だれにもないのだ。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年7月4日掲載)

 

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