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2022年5月23日 (月)

人の心は壊されても器物以下なのか

-侮辱罪の厳罰化はこの程度でいいの-

 これが厳罰化なのか?

 ネット上の誹謗中傷対策として侮辱罪の刑罰を重くする改正法案が、いまの国会で成立する。それに先がけて、私は元高級官僚の高齢ドライバーの暴走事故で最愛の妻と3歳の娘を失った松永拓也さん(35)を取材させてもらった。

 事故後、悲しみの中で高齢ドライバー対策と交通事故撲滅を訴えてきた松永さんも中傷の被害者だった。ツイッターアカウントに「金や反響目当てで闘っているようにしか見えませんでしたね」「お荷モツの子どもも居なくなったから乗り換えも楽でしょうに」などのメッセージが届いて被害届を提出。22歳の男が侮辱罪で書類送検された。

 私がお会いした日、松永さんは、ネット上で「性格悪い」「生きている価値あるのか」などと中傷され、命を絶ったプロレスラーの木村花さんのお母さんと侮辱罪の問題で国会に足を運んでいた。花さんを中傷した男2人は現行の侮辱罪で書類送検されたが、22歳の女性を死に追い込んでおきながら、処分結果は9000円の科料。携帯電話で通話しながら運転した際の反則金の半分という額だ。

 こうした状況に花さんの母親たちが声を上げ、今国会でこれまでの侮辱罪の「30日未満の拘留または1万円の未満の科料」に、新たに「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を加えることになった。

 だけど悲しみの底にいる人たちをここまで傷つける誹謗中傷に、国会はこの程度の法改正でよしとしたのか。

 ちなみに現行刑法の器物損壊罪は3年以下の懲役・禁錮。国会議員のみなさん、人の心は、壊されても器物(モノ) 以下なのでしょうか。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月23日掲載)  
 

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