国が被害者救済に乗り出すべき
-「あすの会」再結成-
ジャーナリストとして、さまざまな会の設立や目的を達成しての解散は数多く取材してきたが、解散からわずか4年で会が再結成されるケースは初めてだ。
「全国犯罪被害者の会」、通称「あすの会」がこの春、「新あすの会」として再結成された。2018年6月に開かれた解散総会を取材したが、発足から18年たって犯罪被害者基本法の成立や裁判での被害者参加の実現など一定の成果をあげたこと。何より会長の岡村勲弁護士はじめ会員の高齢化が解散の大きな理由だった。
だがそれから4年。「今日は苦しいが、あすは必ず良くしてみせる」というあすの会の趣旨どころではない状況が出てきた。日本には「犯罪被害者等給付金」があるが、欧米に比べて極端に少なく、最高でも2900万円、平均630万円。働き手を失った家族は、とても生活できない。
そこにもっと悪い状況が追い打ちをかけてきた。2019年には36人が死亡した京都アニメーション放火殺人。昨年は小田急線、京王線で「死刑になりたい」「誰でもよかった」という無差別殺人未遂放火事件が発生。さらに大阪のクリニック放火殺人では26人が死亡。いずれも被告の責任能力を問う鑑定が必要だったり、大阪の事件のように被疑者も死亡してしまって、賠償どころではないケースもある。
ここは海外の一部の国と同様、国がいったん被害者救済に乗り出すしかないのではないか。それにしても、新あすの会でも会長となる岡村さんは93歳。心が痛む。その岡村さんを幹事として支える土師守さんの次男、淳君が殺害された神戸児童連続殺傷事件は、この5月24日で発生25年となる。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月2日掲載)
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