組織はだれひとり幸せにできなかった
-連合赤軍事件から50年-
沖縄が本土復帰した1972年は札幌オリンピック、パンダの来日と明るいニュースがあった一方で、2月に連合赤軍によるあさま山荘事件が起きた。人質を取って立てこもった5人は銃を乱射。警官2人、民間人1人を射殺。10日後突入した機動隊に全員逮捕された。
あれから50年、BSテレ東の番組で訪ねたあさま山荘は、鉄球が打ち破った壁は修復されていたが、ほぼ当時のまま。私は視聴率じつに89・7%、警察(サツ)まわりの取材の途中、刑事たちとテレビにくぎづけになった、あの日を思い出した。
だが5人の逮捕後、さらに凄惨な事件が明るみに出る。連合赤軍を革命戦士のための組織と位置づけた彼らは、仲間の些細な言動にも自己批判を迫り、総括と称するリンチの末、殺害。後ろ手に縛ったままの遺体などを群馬の榛名山、妙義山などに14体、埋めていた。
番組では、そのリンチ殺人に加担、服役した岩田平治さん(72)を取材させてもらった。世界同時革命を掲げた彼らは、より強固な組織へと学生中心の赤軍派と労働者主体の京浜安保共闘を合体させて連合赤軍を結成する。だが連合赤軍は、やがて組織を守るための組織と化して疑心暗鬼の末、仲間を葬り去ってしまった。
「みんなを幸せにと作った組織が結果、だれひとり幸せにできなかった」。諏訪湖の近くで、いまは静かに暮らす岩田さんのしぼり出した声が心に残る。
その「組織」を「国家」と置き換えたとき、21世紀の世界はまた同じことを繰り返しているのではないか。
BSテレ東「NEWSアゲイン~あさま山荘事件から50年」は6月2日(木)午後6時54分から。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年5月30日掲載)
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