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2022年3月21日 (月)

裁判所の保身と無実の獄中20年

-警察と検察を訴え判決も-

 「一部勝訴」などと報じられているが、この裁判は控訴審で一からやり直すべきではないか。1995年、大阪市東住吉区で自宅に放火、保険金目当てに娘(当時11)を殺害したとして無期懲役が確定。2016年、再審無罪となった青木恵子さん(58)が警察(大阪府)と検察(国)を訴えた裁判で先週、大阪地裁は警察捜査の違法性を認める一方、検察への請求は棄却した。

 「勝つだけでなく、真っ白な判決を」と白い服で法廷に臨んだ青木さんは、検察の責任が問われなかったことに「負けたような気持ち」と怒りをあらわにしている。

 地裁判決は青木さんに娘の写真を突きつけ、長時間、「鬼親」などと耳元で怒鳴り続けた警察の取り調べを違法としたものの、検察の対応については和解勧告の際、「大いに疑問あり」としていたものを一転、「起訴に違法性はない」とした。

 まことにおかしな話ではないか。警察が無実の女性を心身ともにボロボロになるまで痛めつけた事件を、警察の捜査を指揮、助言する立場にある検察が起訴しても責任は問われないのだ。

 なぜそこまで検察の側に立つのか。そこには検察の味方というより、裁判所の保身が見え隠れしているように思えてならない。無実の人に無期懲役を言い渡し、20年間獄中に置いたのは、ほかならぬ裁判所ではないのか。検察の起訴を違法ではないとすることで、裁判所は自らに累が及ぶことを避けているとしか考えられない。

 先日、児童相談所ではなく母親のもとに置くと家裁が決定した男の子が、その母に殺害されてしまった事件といい、裁判所が市民の心からどんどん離れて行っていると思えてならない。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2022年3月21日掲載)

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