押し切られた県警本部長
-佐賀に続き滋賀県警-
前回の佐賀県警に続いて、今度は滋賀県警がとんでもないことをしでかした。滋賀県の病院で患者が死亡、看護助手だった西山美香さん(41)が無実の罪で12年間服役。2020年再審無罪が確定した事件で西山さんが国と県(県警)を相手どった民事の国賠訴訟で県警が「犯人は西山さん」とする書面を、無罪を言い渡した大津地裁に提出していた。
この事実に三日月大造知事は滝沢依子県警本部長を呼びつけ、その場で謝罪させる事態に発展した。滝沢本部長は「無罪を否定するものとは思っていなかった」としているが、そんなわけがない。キャリア官僚が地元採用警察官に押し切られ、決裁した光景が目に浮かぶ。
憤りというよりは悲しくなる。先週書いた主婦暴行死事件で捜査を懇願する親族を追い返した佐賀県警は、遺族が再三、杉内由美子本部長の謝罪を求めたが、県警は面会を拒否。結果、杉内本部長は体調を崩して警察庁に引き取られていった。
私が半世紀も取材している警察組織は典型的な男社会だ。都道府県警のトップ、本部長に初めて女性が就任したのはわずか8年前。その後、全国27万警察官の中から5人の女性本部長が誕生したが、このうち2人が滝沢さんと杉内さんだ。
この人たちがいま、なすべきことは、どんな形で無実の人を再び殺人犯とする書面への決裁を迫られたのか。なぜ遺族への謝罪をかたくなに止められたのか。それを明らかにすることだ。
それが市民県民への責務であると同時に、キャリア、ノンキャリアを問わず、自らの前に男性と同様のフィールドが開けていると信じて額に汗して働く後進に見せるべき姿だと思うのだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年10月4日掲載)
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