いまこそ日大の膿を出すとき
-2億2000万円不正還流-
新聞記者時代の先輩、Kさんから電話をいただいた。Kさんは退社した後、アメリカで長らく生活、帰国後は日大で特任教授をつとめ、いまはがんの闘病中だ。
「あの大学は、学部長でも体育会系の理事の前に出ると米つきバッタ。いま膿を出さないと…」。かすれた声が怒りでふるえている。
大学病院建て替えにからんで、その体育会の理事の井ノ口忠男容疑者らが2億2000万円を不正に還流させたとして東京地検特捜部に逮捕された。還流された金の一部は、これまた体育会系の田中英寿理事長に渡った疑いが強く連日、地検の事情聴取が続いている。
驚くことに井ノ口容疑者は3年前の日大アメフト部悪質タックル事件に関与。選手らに「真相を話したら、総力をあげてつぶす」と脅して大学を追われた男。それが理事長との体育会つながりで早々と復帰していた。
私も学生スポーツが大好きだ。数年前の秋、神宮球場の空に広がるあかね色の雲の下の6大学リーグ戦は、いまも忘れられない心地よい思い出だ。だが一方で、体育会つながりを悪用してカネやポストを薄汚く回し合う。これほどスポーツに対する冒涜があるか。
巨大組織とはいえ、あくまで大学内のカネと人の流れという声もあるようだが、それは違う。私学の中では常にトップ3に入る年間90億円もの国税が助成金としてつぎ込まれているのだ。
学問を大事にする日大教授陣、職員、そして学生。何よりスポーツをこよなく愛する体育会のみんな。いまこそタッグを組んでこの大学を根本から改革しようじゃないか。司法もメディアも、そして何より国民がしっかりと見続けている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年10月18日掲載)
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