なんとか法政を仲間に入れてやろう
-コロナ禍の東京6大学野球-
体育会系理事による不正事件に揺れる日大にふれた先週のこのコラムで〈私も学生スポーツが大好きだ。数年前の秋、神宮球場の空に広がるあかね色の雲の下の東京6大学野球…〉と書いた。その東京6大学野球をめぐって、朝日新聞の安藤嘉浩編集委員が心打つ記事を書かれていた。
この秋、6大学野球が激震に見舞われた。法大野球部がコロナに集団感染。9月11日開幕予定の秋季リーグ参加は絶望的とみられた。
安藤さんの記事によると、〈加藤重雄監督も「(私も)半分以上あきらめていました」〉
監督と助監督が寮で隔離生活を送る部員の部屋に食事を運び、ゴミを回収する日々。だが、そんな法大のために連盟が動いた。9月11日の開幕を1週間ずらした上、法大戦を隔離が解ける10月に集中させたのだ。
〈「なんとか法政を仲間に入れてやろうという、皆さまの熱い思いが胸にズシンときました」。法大の加藤監督は理事会後のオンライン会見で声を詰まらせた〉
そして迎えた10月9日の初戦。〈先発した 三浦銀二主将は「連盟関係者、他の5大学のご理解により神宮に立てました」と感謝した〉。記事によると、法大の選手は、はつらつとプレーし、相手校も全力でぶつかっているという。
安藤さんは118年の6大学野球の歴史にもふれ、戦中、戦後、そして今回のコロナ禍。〈厳しい状況下でもライバルと競い合い、高め合う機会を大切にしてきた〉と書かれている。
10月31日早慶戦のあと、閉会式を迎える2021年秋季リーグ。法大をはじめ、5大学の選手、応援団は神宮の空を雲を風を、どんなふうに感じることだろうか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年10月25日掲載)
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