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2021年9月 1日 (水)

組織犯罪摘発に一定条件「福岡基準」を

-工藤会トップ死刑判決-

 1990年代から2000年初めにかけて、現在、危険指定暴力団となっている工藤会が本部を置く北九州市は「暴力が支配する町」とまで言われ、市民や企業に向けて銃弾が乱れ飛んだ。私も何度も取材し、工藤会本部にも足を踏み入れた。

 先週、福岡地裁は、その工藤会総裁、野村悟被告(74)に死刑、会長の田上不美夫被告(65)に無期懲役の厳刑を言い渡した。起訴された4事件のうち漁協組合長射殺は実に23年も前の事件。しかも、すべての事件に直接証拠はなく、暴力組織の上意下達の人間関係から両被告の事件への関与、指揮命令があったとされた。

 「そんな間接証拠だけで死刑判決か」という批判もあるが、判決言い渡しのあと裁判長に「生涯後悔するぞ」と、声をあげる被告。こうした暴力的組織に壊滅作戦を展開した警察検察の努力は高く評価されていい。

 その一方で、こうした捜査手法、司法判断はどこまで認められるべきなのか、危ぶむ声があることも確かだ。

 弾圧や抑圧に抗議するデモ。あるいは反原発、反基地のピケや座り込み。そうした活動のなかで、だれかが逮捕されるたびに指揮命令があったとしてトップの責任を問われたら、組織は壊滅的な打撃を受ける。

 ここはどうだろう。今回の判決を受けて、万やむを得ず死刑を選択する条件として「永山基準」があるように、組織犯罪摘発について一定の条件をつける。例えば動機、残虐性、指揮命令体制、社会的影響…。こうしたものを組み入れた、いわば「福岡基準」のようなものは作れないか。それは必ずや、日本の司法界に多大なインパクトを与えることになるはずだ。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年8月30日掲載)

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